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2) 電気始動
 エンジンのハズミ車の外周にリング状の歯車を装着し、スターティングモータのピニオンと噛み合わせエンジンを廻し始動する方式で、その電源はバッテリからとる。又、バッテリに対する充電は、エンジンに取り付けたオルタネータで行っている。
 スターティングモータには12Vと、24V仕様のものがありエンジンの大きさにより使い分けている。又大きなエンジンにはスターティングモータを2個使用したものもある。
 電気始動装置は、スターティングモータ、オルタネータ、バッテリ、スタータスイッチ等で構成されている。
(1) スターティングモータ
 (イ) 構造
 スターティングモータは、2・160図に示すような構造になっており、モータ部は回転するアーマチュア部分、磁界を作るフィールドコイル、アーマチュアに電流を流すブラシなどから構成されている。
 又エンジンとの結合離脱はマグネチックスイッチにより行われており、マグネチックスイッチはシフトレバーを介して、オーバランニングクラッチを動かしている。
2・160図 スターティングモータの構造図
[1] フィールドコイル
 ヨーク、ボールコア、ブラシ及びフィールドコイルから構成されている。
 フィールドコイルはボールコアに直接巻いたものをヨークヘ取り付け、樹脂で固定して、耐熱、耐振性を向上させている。
2・161図 フィールドコイルの構造
[2] アーマチュア
 アーマチュアはコア(鉄心)、シャフト、コイル、コンミテータなどで構成され、アーマチュアコイル全体を樹脂で固めて、耐熱耐振性を向上させている。  又、シャフトにはねじスプラインが切ってあり、このためピニオンギヤの前進力はアーマチュアの回転力によっても得られ、その分だけマグネチックスイッチの小型化が可能となる。同時に回転力による前進力が極めて強いため噛み合いも良好となる。
2・162図 アーマチュア
[3] オーバランニングクラッチ
 オーバランニングクラッチは、エンジンの回転からアーマチュアのオーバランによる破損を防止するためのもので、ピニオンギヤの離脱をスムーズにする働きもしている。
 構造は2・163図示すように、インナ(ピニオンギヤと一体)、アウタ(スプラインチューブと一体)、クラッチローラ、スプリングから構成されている。ローラの納まる凹部分は一方が狭くなっており、ローラは常にその狭い方にスプリングによって押しつけられている。
2・163図 クラッチの構造
(作動)
 2・164図に示すようにスターティングモータが始動すると、アーマチュアの回転を受け、アウタが矢印の方向に回転するとクラッチローラはスプリングでアウタ凹部と、インナの隙間の狭い方へ押しつけられるので、アウタとインナがロックされる。即ちローラがインナとアウタの問でくさびのような働きをしてアウタの回転をインナヘ伝え同じ速度で回転する。
 エンジンが始動し回転速度が上昇するとピニオンギヤがリングギヤで廻され、ピニオンギヤ(インナ)の回転がアウタ(アーマチュア)の回転より速くなり、クラッチローラは、スプリングを圧縮する方向に移動する。従ってアウタ凹部とインナの隙間が広くなり、インナとアウタがフリーとなり、アーマチュアのオーバランを防ぐ。
2・164図 オーバランニングクラッチの作動
[4] マグネチックスイッチ
 マグネチックスイッチはピニオンギヤの押し出しとモータ回路のメイン電流をON、OFFする働きをする。
 2・165図に示すようにシリースコイル(吸引コイル)とシャントコイル(保持コイル)、リターンスプリング、プランジャなどから構成されている。
 吸引コイルと保持コイルの巻き数は同じであるが、線の太さが異なっている。
即ち吸引コイルは太い線で巻いてあり起磁力は大きく、保持コイルは小さくなっている。
2・165図 マグネチックスイッチの構造
(ロ) 作動
 下記の順序で作動しエンジンを始動させる。(2・166図)
[1] スタータスイッチを入れるとマグネチックスイッチのシリースコイル及びシャントコイルに電流が流れ、この電流によって生じた電磁力によりシフトレバーが引張られる。
[2] シフトレバーはクラッチと共にピニオンギヤを押し出し、ハズミ車のリングギヤに噛み合わせる。
[3] これと同時にマグネチックスイッチのシリースコイルに流れた電流はスターティングモータのフィールドコイル及びアーマチュアコイルにも流れて、アーマチュアを回転させピニオンクラッチに緩い回転を与える。
[4] ピニオンクラッチは緩く回転しながらアーマチュアシャフトに沿って押し出されるので、ピニオンギヤは確実にハズミ車のリングギヤに噛み合う。
[5] このときマグネチックスイッチのムービングコンタクタがステーショナリコンタクタを短絡してスターティングモータに主電流を流す。
[6] 主電流が流れるとスターティングモータは強大な始動回転力を出してエンジンを始動させる。
[7] スタータスイッチを開にするとマグネチックスイッチの電磁力が消失してシフトレバーは軸に取り付けられたリターンスプリングの力で元の位置に引き戻される。
[8] シフトレバーが元の位置に戻ればピニオンギヤも元の位置に戻され、リングギヤとの噛み合いが解かれモータも止まる。
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2・166図 スターティングモータの系統図
(2) オルタネータ
 (イ) 構造と機能
 スターティングモータは、バッテリを電源としてエンジンを始動しているが、使用したままではバッテリの蓄電量が減少して始動できなくなる。そのために充電が必要となってくる。
 バッテリヘの充電は通常機関からベルト駆動により充電発電機を廻し行っている。以前は、充電発電機にはダイナモ(直流発電機)が主に使用されていたが、現在では半導体の開発と共に、殆どのメーカがオルタネータ(交流発電機)を採用している。
 オルタネータは一般に界磁回転型で、ブラシとスリップリングを介して、ロータの励磁コイルに直流電流を供給して磁界をつくり、ステータの発電コイルに発生した交流電圧をダイオードを用いて整流し直流として取り出している。
 2・167図は船舶用機関に使用されるICレギュレータを内蔵した2線式のオルタネータで、回転子(ロータ)固定子(ステータ)、軸受部(フロントカバー、リヤカバー)、ICレギュレータ、プーリ等で構成されている。
2・167図 オルタネータの構造図








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