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5) 自動進角装置(オートマチックタイマ)
 燃料が噴射されてから着火するまでには多少の時間がかかり、この時間を着火遅れの期間と云っている。着火遅れの期間(時間)は機関の回転速度が変わっても余り変化しないため、高速回転になればなる程、着火遅れの期間にクランク軸は大巾に回転してしまうので、最適噴射時期を得られなくなる。そのために着火遅れの期間を予め予測しておき高速回転に合わせ、噴射時期を進ませてやらねばならない。しかし噴射時期を高速に合わせてしまうと中低速回転時には逆に噴射時期が早すぎてしまい最適噴射時期が得られない。
 この問題を解決するために、高速回転になったとき噴射時期が自動的に進み常に最適噴射時期が得られるようにするために取り付けられているのが自動進角装置である。
(構造及び作動)
 2・156図に示すような部品で構成されている。ウエイトの一端に穴があり、この穴をハブのボルトに嵌め、ハブは燃料ポンプのカム軸に固定されている。ドライビングフランジのジャーナルがウエイトの曲面に接しており、ジャーナルとボルトの間にスプリングが取り付けられている。ドライビングフランジはカム軸により駆動され、ジャーナルはウエイトの曲面を押してハブに動力を伝える。
 2・157図(A)は低速時を示したもので、ウエイトには大きな遠心力が働いていないのでスプリングの長さは最も長い状態となっている。(B)図は高速時を示しており、ウエイトは遠心力によってハブのボルトを支点にして外側へ拡がっている。ウエイトの曲面はジャーナルを支点にしてスプリングを圧縮し、ハブボルトを引き寄せ、ハブはその分だけ燃料ポンプのカム軸回転を進ませるので噴射時期を早くすることが出来る。
 2・158図はタイマの進角特性の一例であり、カム軸が300min−1(rpm)の時を基準にして、1,350min−1(rpm)では、6°進角することを示している。
(点検整備について)
 年一度は必ずオイルを全量抜きだし、金属粉が検出されれば分解して摩耗部品を交換整備する。
2・156図 タイマの構成部品
2・157図 タイマの構造と作動
2・158図 タイマの回転数と進角の関係例








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