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4) ガバナの構造と作動
(1) 単体形噴射ポンプ用機械式ガバナ
 2・152図に単体形噴射ポンプ用機械式ガバナの構造の一例を示す。エンジンの回転速度を決める調速ハンドル、エンジンの回転と連動して回転するガバナウエイト部分、燃料ポンプの噴射量調整桿とその連結リンク、及び調速ハンドルとガバナレバを結ぶレギュレータスプリング、等により構成されている。
 遠心力によって作動するガバナウエイトはウエイト支え台にピンで取り付けられている。
 ガバナウエイト支え台はガバナ軸及びガバナギヤに、キー又はナットで固定されており、エンジンが回転するとガバナギヤも回転し、ガバナ支え台に取り付けられたガバナウエイトに遠心力が生じる。エンジンの回転速度が高くなればガバナウエイトに働く遠心力は大きくなり、ガバナウエイトはガバナウエイトピンを支点としてレギュレータスプリングを引っ張りながらガバナスプリングを圧縮して外側に開く。ガバナウエイトが開くとウエイトの爪の部分でガバナスピンドルを左側へ動かし、このスピンドルの頭部がガバナレバーを動かし更に燃料噴射ポンプの調整桿を動かして噴射量を少なくする。
 又反対に回転速度が下がってガバナウエイトにかかる遠心力が小さくなると、ガバナスプリングの圧力とレギュレータスプリングの引張り力によってガバナウエイトが閉じて、燃料ポンプの調整桿を左に動かし燃料の噴射量を多くする。
 即ちガバナウエイトの開きが多くなるほど燃料の噴射量は少なくなり、開きが少なくなる程、噴射量は多くなる。このガバナウエイトの開閉を調整し回転速度を上げ下げさせるために、レギュレータスプリングがある。
 このスプリングは調整ハンドルを上げる程力が強くなり、ガバナウエイトは開きにくくなり、燃料が多くなって回転速度が高くなる。反対に調速ハンドルを下げればスプリングの力は弱くなって、ガバナウエイトは開きやすくなり、燃料が少なくなってエンジンの回転速度は低くなる。
 従って調速ハンドル位置を一定にしておいた場合の、回転速度の変化とガバナの作動には次の関係がある。
 回転速度上がる→ガバナウエイト開く→噴射量少くなる→回転速度下がる→ガバナウエイト閉じる→噴射量多くなる→回転速度上がる→ガバナウエイト開く→噴射量少くなる→回転速度下がる。
 
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 このような働きにより常にエンジンの回転速度は一定に保たれる。
 
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2・152図 単体形噴射ポンプ用機械式ガバナ
(2) 列形噴射ポンプ用機械式ガバナ
 集合形燃料噴射ポンプの場合は、2・153図および2・154図に示すようにポンプの端に取付けてポンプと一体で調速機を設けている。原理的には機械式ガバナと同じであるが、燃料噴射量の制限装置、始動時の燃料増量装置およびエンジンのトルク特性を改善するためのトルクスプリング等がコンパクトに組込まれている。
2・153図 RSVガバナ
 
2・154図 リンク機構
             
(3) 油圧式ガバナ
 舶用主機関に用いられている油圧ガバナはウッドワード社のSG形、ゼクセル社のRHD形が殆どである。基本的な構造は両社製ともほぼ同じである。これらのガバナはエンジンに垂直又は水平に取り付けられ、駆動軸はスプライン又は歯車によりカム軸などで駆動され、出力軸はガバナの片側からでも両側からでも取り出せ、停止は速度調整軸をアイドルスピード位置より更に回すことにより行う構造となっている、2・155図にウッドワード社のSG形ガバナの構造を示す。
 
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2・155図 ウッドワード社製SGガバナの構造図
 システム油は給油口からガバナに入り、ギヤポンプにより吐出され圧力が高まると、リリーフ弁が開き油を循環させると共にリリーフ弁バネ力が強くなり、給油口から流入を制御する。作動油圧が低下すると、リリーフ弁が戻り循環油を制限すると共に給油口より油を流入する。余分な油はドレン穴から機関内部へ排出される。
 機関が一定の回転速度で運転中はコントロールランドが、ボールヘッドのパワーピストンヘ通じる孔を閉鎖し、ウエイトの遠心力と調速スプリングのバネ力が釣り合っている。
 負荷が増加すると回転速度が下がり、ウエイトの遠心力が弱まりバランスが崩れ、バネ力でコントロールランドを押し下げボールヘッドの孔から作動油が流れパワーピストンを押し上げ出力レバーを押して出力軸を燃料増の方向に回し、噴射量を増して回転速度が上昇する。出力レバーが押し上げられると速度ドループレバーピンは上方へ押し上がり、フローティングレバーを持ち上げて調速スプリングを引き上げるためバネ力は弱まりウエイトの遠心力が強まり、コントロールランドを引き上げて孔を閉鎖し、パワーピストン部への作動油流入を止め、パワーピストンの動きを止める。このようにパイロットプランジャを元の位置へ戻す特性を速度ドループと云う。
 負荷が軽くなると機関の回転速度は上昇し、ウエイトの遠心力は大きくなり、コントロールランドを引き上げ、パワーピストン下部に働く油は逃げ圧力が低下する。戻しスプリングのバネ力により出力軸と出力レバーは燃料減方向へ回され、速度ドループレバーピン位置も下がり、フローティングレバーが下降し、調速スプリングのバネ力が増し、ウエイトの遠心力と釣り合いコントロールランドを押し下げ、ボールヘッドを閉鎖する。出力軸の回転角に対する速度の変化量は速度ドループレバーピンの位置によって定まり、ウエイト方向に動かせば小さくなりパワーピストン方向へ動かせば変化は大きくなる。
(ガバナの点検整備について)
 ガバナの故障は殆どが不同回転(ハンチング)として現れ、回転速度が整定できなくなる。その他の現象としてはスロー回転の整定不良、出力不足、オーバラン(過回転)などがある。
 ガバナスプリングの損傷やへたり、ガバナウエイトのピン、ブッシュ、ローラ摺動筒などの摩耗や、ベアリングの損耗等につき点検する。特に重量の大きなウエイトを使用している場合又は一定回転数で長く使用するものはその付近での局部的な摩耗が起こりやすいので特に注意して点検する。
 又ガバナ自身の不具合以外にリンク機構の遊び、こじれなどがあるとハンチングやオーバランの原因となるので、連結桿ピン部の摩耗、ガタなどの他、連結軸の曲がり、こじれ等につき調査し、不具合部品は交換又は修正し 円滑に作動するように調整する。
 








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