6) 燃料噴射弁
燃料噴射ポンプで加圧された燃料圧力が、噴射弁バネ力より大きくなった時に針弁(ニードル)が燃料圧力により押し上げられて開弁し、自動的に燃料の噴射が行われる装置である。2・143図は燃料噴射弁の構造を示しており、噴射弁(ノズル)は、噴射弁ホルダに固定ナットで取り付けられニードルは受圧桿(プッシュロッド)を介して調圧バネ力でシート面に密着し、燃焼ガスの浸入を防止している。燃料弁ホルダはシリンダヘッドに取り付けられ、ノズルの先端は固定ナットと共に燃焼室の一部を形成し常に燃焼ガスに接している。大形機関には針弁の周囲を燃料油を循環させ冷却する構造を採用しているものもある。
2・143図 噴射弁ホルダの構造
(1) 噴射弁の種類
燃焼室の形状により下記の3種類がある。
・ ピントル形
・ スロットル形
・ ホール形(単孔式及び多孔式)
2・144図 燃料弁の種類
(2) 噴射弁の形状
[1] ホール形噴射弁
直接噴射式機関に使用され2・145図に示す如く多孔形噴射弁の噴孔はニードル弁の中心軸に対して対象に設けられ噴孔数と噴孔径、噴射角は、噴霧流の大きさや噴霧の到達距離に適したものとなるように決められている。噴孔径を小さくすれば油粒は細かくなり霧化は良くなるが、貫通力は小さくなり、噴孔が詰まりやすくなる。従って噴孔径や、噴射角は燃焼室の形状により決められている。
2・145図 ホール形噴射弁
[2] ピントル形噴射弁
2・146図に示す如く噴孔部に円筒形のニードルの先端を突きだし、噴孔との間に環状のスキマを設け、開弁時にこのスキマから中空円錐状に噴霧する。先端の角度や形状により噴霧の拡がり角や噴射量とニードル弁揚程(リフト量)の関係をいろいろに変えられる。先端部を噴孔に突き出す事により噴射の度に噴孔が掃除できるので詰まることはほとんどない。副室式機関に使用される。
2・146図 ピントル形噴射弁
[3] スロットル形噴射弁
ピントル形と殆ど構造は同様であるがニードル先端部が2・147図に示す如く逆テーパ形の特殊な形状となっている。これは噴射始めの開口面積を絞り着火遅れ期間の噴射量を少なくし、着火後噴射量を増すようになっているので、ノッキングを防止する効果を持っている。副室式機関に使用される。
2・147図 スロットル形噴射弁
(3) 噴射圧力の調整と噴霧テスト
一般に噴射圧力は副室式の場合は12〜16MPa(122〜163kgf/cm2)、直接噴射式機関では20〜30MPa(204〜306kgf/cm2)程度である。2・148図に示すようなノズルテスタに噴射弁ホルダを取り付け、シムを増減するか、又は調圧バネを締め付けながら規定圧力で開弁するように調圧する。噴霧テストはノズルテスタのハンドルを1分間に20〜30回の速さで強く押しながら開弁圧と、噴霧の形状、大きさ、拡がり等を点検する。なお、手のひらを噴霧部分に近づける事は非常に危険であり、絶対にやらぬように注意が必要である。
噴射圧力は各部が使用中に摩耗して低下するため定期的に点検調整しなければならない。
噴霧の状態は燃料弁の形式により大きく異なるが、一般的な噴霧状態を2・149図及び2・150図に示す。
2・148図 噴射圧力の調整
2・149図 ホール形噴射弁の噴霧
2・150図 ピントル形噴射弁の噴霧