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2. 運転時の不調とその処置
 なお、本項は主に高速機関を中心にまとめてある。また、数値については機種により異なるので、当該機種のメーカ指定数値に置き換えて活用されたい。
2.1 アイドリング回転中のハンチング
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1) ガバナ調整不良
(1) 回転速度の下げすぎ
 アイドリング回転速度は、機種及び仕様により若干異なるが、550〜650min−1(rpm)であり、標準で600〜650min−1程度である。これ以下にアイドリング回転速度を低下した場合は、ハンチングを起こしたり、負荷投入時にエンジンストップを起こすことがある。なお2次以下の危険な振り振動の回転域を避けるために、アイドリング回転速度を高めにセットしたものもあるので、みだりに下げ過ぎぬように注意しなければならない。特に長時間スロー運転を続けるような場合は注意しなければならない。
(2) アイドリング回転の調整不良
 アイドリング回転速度の調整不良の場合は、ハンチングを起こすので、正しく調整しなければならない。
調整する場合は、冷却水温度及び潤滑油温度はいずれも十分暖気された状態(例えば70℃以上)で行うことが大切である。
[1] RSV、RSUV形ガバナ
 遠隔操縦用ケーブルなどを外して、コントロールレバをフリーの状態にする。
 低速回転ストッパボルトで、550〜600min−1に下げてハンチングが起こる場合は、アイドリングサブスプリングをハンチングが止まる寸前まで締め込む。
 低速ストッパボルトをネジ込み600〜650min−1にセットし、負荷投入時に機関ストップしないことを確認する。エンストを起こす場合は、さらに回転を上げる。
[2] RQUV形ガバナ
 低速ストッパボルトをネジ込み、アイドリング回転を600min−1とする。負荷投入時にエンストしないことを確認する。エンストを起こす場合はさらにネジ込み回転速度を上げる。700min−1以上でもハンチングしたり、エンストを起こす場合は低速バネその他の故障である。
[3] PSG形ガバナ
 アイドリングスピードアジャスティングスクリュで回転速度を600min−1にする。
ハンチングが起こる場合は、ニードル弁を2〜3回開らき空気が完全に抜けるまで約30秒間程度、ハンチングをさせてから徐々にニードル弁を閉じてゆき、ハンチングが止まるまで閉める。但しニードル弁は全閉にせず1/4回転以上は開けておくこと。
 ハンチングが止まらない時は、アジャスティングスクリュをネジ込み600〜650min−1とし、負荷投入時にエンストを起こさないことを確認する。
[4] EG形ガバナ
 外部ランプスイッチを開き、機関回転速度を下げ、規定のアイドリグ回転速度になるように、ローアイドルスピードのポテンションメータで調整する。
 この時コントロールラックの最少燃料目盛位置より上の位置で、ローアイドルスピードのポテンションメータによる設定で制御していることを確認する。
 ハンチングする場合は、ゲイン及びスタビリティのポテンションメータで調整する。ゲインはできるだけ時計方向へ回し、不安定になる寸前で止めたあと、スタビリテイで安定するように調整する。
[5] DYNA−1形ガバナ
 電源スイッチは、オフで機関停止させコントローラのトップカバーを外し、各ポテンションメータのセット位置を確認する。
 A:3時
 GAIN:9時
 D:10時
 I:8時
 L:10時(工場で調整)
 電源スイッチ及びスタータスイッチを入れて始動し、スピードポテンションメータで、アイドリング回転を600min−1にする。スピードポテンションメータは20回以上ターンしないこと。
 ハンチングが発生する場合は、Aをアクチュエータレバーが急速に振動する(ハンチング状態)まで時計方向へ回し、その後、ハンチングが止まるまで反時計方向へ戻す。
 アクチュエータのハンチングが止まらぬ場合は、ゲインを、徐々に反時計方向へ回して止める。アクチュエータがハンチングしない場合は、ハンチングを始めるまで、ゲインをゆっくり時計方向へ回し、次にハンチングが止まるところまで、反時計方向へ徐々に戻す。
2) 取扱不良
(1) エア抜き不十分
 燃料系統内部にエアが残っていると、燃料噴射量にバラツキを生じ、ハンチングを起こすことがあるので、各部のエア抜きを十分に行うことが大切である。
 特に燃料タンク内の燃料が少ない時はエアを吸い込み易くなるので、補給してからエア抜きを完全にする。
(2) 燃料漏れ
 燃料もれを生じている箇所があると、そこからエアを吸い込み易くなるので、燃料もれは完全に修理しなければならない。
(3) フイルタの詰まり
 燃料濾器のエレメントが目詰りを起こすと、流量が極端に減少するため、ハンチングを発生する。定期的に燃料濾器の清掃や、エレメントの交換をしなければならない。
(4) ドレン抜き不足
 燃料中に混入する水分が多くなると、燃焼に影響しハンチングを起こすことがあると共に、ニードル弁やプランジャなどが腐食摩耗して、種々のトラブルを誘発する。従って、燃料タンク、沈澱槽、濾器などに沈澱する水分は定期的に、完全に排出させなければならない。
3) 燃焼のバラツキ
(1) ノズルの噴霧不良
 ノズルの噴霧状態が悪化すると、各シリンダ間の燃焼にバラツキを生じ、ハンチングを起こすことがある。
(2) 噴射ポンプ不良
 デリベリバルブ及びプランジャなどが摩耗損傷した場合は、噴射量のバラツキや、あとだれによる燃焼不良を生じてハンチングすることがある。
(3) 噴射量調整不良
 各シリンダヘ送られる噴射量の差異が大きくなるとハンチングを起こすことがあるので、列形ポンプの場合は各シリンダの噴射量差異が許容値内に入るようにポンプテストスタンドで調整しなければならない。
ユニット式の場合は、各シリンダのヘッド出口排気ガス温度が、定格負荷運転時に30℃以内に入るように噴射量の微量調整をしなければならない。
4) リンクの作動不良
(1) 連結リンクの不良
 直列機関の場合は、リンクのこじれ、曲がり、ピンの摩耗などにより、連結リンクの作動が円滑に動かなくなると、ハンチングを起こすことがある。曲りやこじれ、ピンなどの摩耗によるガタを修正しなければならない。
 また、V形機関の場合は左右の連結リンクが曲ったり、こじれにより円滑な作動ができなくなると、噴射量がアンバランスとなり、ハンチングを起こすことがある。曲がりやこじれなどを修正し、連結リンクを取付ける場合は、右側のガバナ付噴射ポンプのコントロールラックを、一様に押し込み(無噴射状態)、左側の噴射ポンプのコントロールラック(常にバネにより引き戻されて、無噴射状態となっている)の連結リンクピン穴を、ターンバックルを調整して合せ、ロックナットで固定してから、連結ピンを挿入して連結する。この時、ピン穴にわずかのずれがあると左右のコントロールラックの動きに差異ができるので、ピン穴にずれが生じないように、ターンバックルを調整しなければならない。
(2) ユニットポンプ
 軸やリンクが曲ったり、こじれたりすると円滑に作動できなくなるので、ハンチングを起こすことがある。
 曲がりやこじれなどを修正し、円滑な作動ができるように修正しなければならない。
 各シリンダのコントロールラックと軸をリンクで連結する時は、軸が回転しないように、ストッパを差し込んでおくとやり易くなる。
 またスピードコントロールレバとリンクを連結する時は、コントロールレバを停止位置に固定し、リンクの連結ピン穴をターンバックルで調整して合わせ、ピンを挿入して連結する。
5) ガバナの故障
(1) スプリングの摩耗へたり
 ガバナスプリング、低速バネ、アイドリングサブスプリングなどに、へたりを生じた場合はハンチングを起こす。RSV、RSUV形の場合はスイーベルレバのアジャスティングスクリュを締め込んで調整するが、その他のものは、ガバナスプリング(低速バネ)を交換するかシムにて調整しなければならない。
 アイドリングサブスプリングの場合は、ネジを若干締め込んで調整する。
(2) ウエイトピン等の摩耗
 フライウエイトのピン部が摩耗すると、ハンチングを起こす。またスリーブやベアリングなどが摩耗すると円滑な作動ができなくなり、ハンチングを起こす。
 特にフライウエイトが大きな場合は、ピン部の摩耗が早くなるので、ハンチングを生じ易いので注意しなければならない。
(3) 油圧ガバナの不良
 専用濾器エレメントの目詰り、ニードル弁の開け過ぎやパワーピストンの作動不良、その他各部の摩耗損傷のほか、ドループ調整時に変動率を小さく鋭敏にし過ぎた場合に、ハンチングが発生し易くなる。








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