3. 資料の管理と関係書類の作成
整備工場において必要とする資料、並びに書類には、次に示すようなものがある。これらの資料及び書類は機関の整備、修理、さらには、後々のサービスを行うために是非とも必要なもので、かつ大切なものである。したがって、その活用、保管については責任者を決めて、徹底した管理が必要である。
3.1 取扱説明書、整備解説書(マニュアル)等
機関の整備、修理作業のためには、整備しておかなければならない必要な資料である。
その内容を理解した上で整備にかかるとともに、部品の良否の判定は、このマニュアルにもとづいて行わねばならない。また、船主に機関の正しい取扱を指導することも整備工場の重要な努めである。したがって、少なくとも取扱機関の題記の資料は、全て揃えておく必要がある。なお、サービスニュース等も備えておくのが望ましい。さらに、取扱説明書などにより取扱機関の特長と使用方法を十分熟知しておくことが必要である。
3.2 検査関係資料
1) 検査規則
船舶安全法の下では、沿岸より12海里以内で操業する20トン未満の漁船を除き、殆んどの船舶の機関について定期検査(初めて航行の用に供する時と船舶検査証書の有効期間が満了した時に行う精密な検査で航行区域、船舶の長さ、用途等により5年または6年ごとに行う)および中間検査(定期検査と定期検査の中間に行う簡易な検査)時に精密な検査を行う旨定めており、また機関の修理、改造等を行った場合には臨時検査を行うことが決められている。この種の検査を受検する際にはその検査の方法および内容を十分知り、万全の準備をしておく必要がある。準備不十分のために受検が遅れ、工期が延び、船主に迷惑をかけることのないよう、扱う船に適用される検査規則および細則は全部そろえて、事前に十分熟知しておかなければならない。また不明な場合は、その都度調べる心掛けが必要である。
2) 検査成績表
検査成績は製品の各部の寸法精度、性能、成分などの要求品質に対する検査結果及び製造履歴がわかるようにした重要な書類である。
検査成績表は一般に検査成績表(書)、証明書または記録と呼ばれており、主なものを下記に示す。
[1] 官庁(運輸省など)、船級協会(NKなど)発行の合格証明書
[2] 認定物件成績表
[3] 性能試験成績表(運転成績表など)
[4] 受入検査成績表
[5] 寸法検査成績表
[6] 材料試験成績表
検査成績表は注文主、納入先、官公庁及び船級協会等に提出するものと、社内保管として管理用に活用するものがあるが、様式については内容明細が分かるように標準化しておくことが必要である。
3.3 機関履歴簿(サービスカルテ)
医者が患者の診察をする場合、患者の過去をカルテにより調べると同じように、機関も過去の整備・修理来歴を機関履歴簿(サービスカルテ)に記録しておくことにより、次回整備の予測をはじめとし、故障発生時の修理復旧が容易にできるほか、機関の体質を知ることにより故障の未然防止も可能である。このように、機関の整備には過去の整備、修理の来歴を知ることは大事なことであり、機関履歴簿を整備し、活用保管することが大切である。
4. 技術員の教育(養成)と管理
機関の整備、修理を行うには、取扱機関ごとの商品知識とともに、最近の機関の高出力化にそなえ、機関の構成要素に対する基礎を理解するなど技術力に優れた舶用機関整備士が必要である。このため舶用機関整備士には、メーカをはじめ、関連機関で実施している講習等を積極的に受講させ、技術力の向上を図る必要がある。また、整備作業には経験工学的な知識が必要であるため、諸先輩が長年培ってきた経験にもとづくノウハウを取得させ、伝承していくことが大切である。これが、最も重要なOJT教育(現場教育)の一つでもあり、こうした環境を創り出すことが大切である。その第一歩は、整理整頓と明るい職場づくりから始まるといわれているが、それには、技術員の安全管理と健康管理が基盤となる。