第2部 巻末資料
2000年4月13日
東京財団 第39回アフタヌーン・セミナー
「中国から見た朝鮮半島情勢」
姜龍範
はじめに
1. 「南北首脳会談」以降の朝鮮半島情勢
(1)南北関係改善における特徴
1)速度の速さ
2)関与する人々の地位の高さ
3)起きている分野の広さ
4)影響力の強さ
(2)不安定要素
1)ブッシュ新政権が登場した後、南北関係はスムーズに進展しておらず、その持続性が問われており、様々な不安定要素を抱えている。
2)両国とも冷戦意識を放棄せず、互いに相手を「主敵」と見なす。
3)両国とも冷戦時代の戦略目標を変更せず、160万の軍隊が今もなお対峙状態にある。
(3)問題解決のポイント
1)米朝関係を含めた国際環境の根本的な改善
2)金正日の訪韓
2.朝鮮半島を巡る米中日露の外交ゲーム
(1)朝鮮半島はアジアの「バルカン半島」、「コソボ」と呼ばれるほど様々な国の外交ゲームが交錯する場所であった。
(2)関与する大国の数の多さおよび国力の小さい国が実力以上に影響力を持つ点が朝鮮半島においては顕著である。
(3)外交ゲームに参加している中国、米国、日本、ロシア等周辺大国の戦略はそれぞれ異なるが、ゲームの中心は大国でも強国でもない北朝鮮である。
3.北朝鮮の変化を見る視点
(1)対外政策の変化
1)変化は戦略的であるか、あるいは戦術的であるか、変化に対する見方は国により、人により相当の開きがある。
2)「通米封南」から「通南通米」へ転換したとはいえ、北朝鮮の外交政策の重点は米国にあり、日朝関係の停滞もこれと密接に関わる。
(2)国内政策の変化
1)「崖っ縁の北朝鮮」にとっては選ばざるを得ない選択
2)金正日の中国訪問−?小平の訪日、訪米に値する変化への決意の現われ、「改革」「開放」の信号
3)「改革」「開放」のモデルとしての中国
4)人事改編一若手実務者の登場
5)思想、世論体系の確立
6)国民意識の変化と変わりつつある平壌
4.朝鮮半島情勢の変化と中国の外交
(1)朝鮮半島問題における中国の基本的スタンス
1)南北の自主平和統一
2)在韓米軍の撤退(少なくとも役割と規模は要調整)
3)非核化
4)統一前に北東アジア国際安全保障枠組の構築
(2)情勢変化によるプラス面
朝鮮半島情勢の緩和は中国の国益にとって有利−北朝鮮の崩壌は中国にとっての最悪の事態
(3)情勢変化による問題
1)朝鮮半島における米国の排他的主導権 中国が最も避けたいシナリオは、米国主導で在韓米軍が撤退しないまま朝鮮半島が統一される状態であるが、韓国の主流派のみならず金正日も支持の立場を表明したことにより中国の懸念は現実のものとなってきている。
2)米国等における中国問題の浮上 朝鮮半島情勢の緩和によって「北朝鮮の脅威」がなくなった場合、中国が米国の新しいターゲットと目されるようになり、台湾問題の解決がさらに困難となる。その兆しはすでに米国の“Joint Vision 2020”および日本の「2000年度防衛白書」に見られる。
3)朝鮮半島における地位と役割の低下 中朝間の伝統的な友好関係は新しい試練に直面したが、米朝関係の急激な進展とそれに伴う日朝、南北関係の正常化あるいはさらなる緊密化は中朝関係に微妙な変化を与えそうである。
4)ロシアの朝鮮半島に対する積極的な「介入」政策
(4)中国が取るべき政策
1)朝鮮半島における平和枠組の構築への積極的関与
2)中朝友好関係の進展一北朝鮮に対する援助の強化
3)北東アジアにおける同盟関係の拡大
二国間関係…中米関係の改善、中日関係の強化、中韓関係の発展、中露関係の密接化
多国間関係…中日韓3国首脳会談の定期化、中露朝協調体制の強化