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奨学金給付・人材ネットワークの形成
 奨学事業部では、国際性豊かな人材の育成を目的に、人文社会科学および運輸・海事分野の大学院生と、地方公共団体の行政官を対象に奨学金を提供しています。
ヤングリーダー奨学基金(SYLFF)プログラム
82,725,486円
 
 ヤングリーダー奨学基金は、国際社会のリーダー育成を目的に人文社会科学分野の大学院生を対象とする奨学金事業です。財団が直接学生に奨学金を提供するのではなく、財団から寄贈された基金の運用益を使って、大学が独自の運営委員会の決定により学生に奨学金を提供します。
 基金(100万米ドル)の寄贈は日本財団が行い、基金事業の運営は後述のフォローアップ・プログラムとともに当財団奨学事業部が担当する共同事業です。単なる奨学金提供にとどまらず、様々なフォローアップ・プログラムを通じて、奨学生ネットワークの構築・活用に力を入れています。
 
基金運営事業
 
・ 新規基金設置校
 1987年に事業が開催されて以来、これまでに世界40カ国61の高等教育機関にこの基金が寄贈され、今年度は、早稲田大学に62番目の基金が寄贈されました。
これによりSYLFFネットワークの大学は80を数え、奨学生の総数は7,500名に達しました。
 
・ 基金既設校の訪問
 基金既設校については、カリフォルニア大学サンディエゴ校、インドネシア大学、北京大学、吉林大学、内蒙古大学、新彊大学、重慶大学、ソフィア大学、ライプツィヒ大学、コロンビア大学、ハワード大学、経営アカデミー(モンゴル)、高麗大学、オーストラリア経営大学院、オークランド大学、マッセイ大学、ヴィクトリア大学ウェリントン校、コインブラ大学、ルール・ボッホム大学、メキシコ大学、サンパウロ大学、ベトナム国立大学ホーチミン校およびベトナム国立大学ハノイ校を訪問し、奨学生との懇談や奨学金プログラム運営担当者との協議を行いました。
 
・ 基金運営担当者研修プログラム
 また、奨学金プログラムの運営と国際教育一般に関する理論と実践を研修する目的で、11ヵ国14大学からヤングリーダー奨学基金運営担当者各1名を米国に派遣し、2000年6月5日から6月30日までニューヨーク市およびワシントンD.Cにおいて研修プログラムを実施しました。英語の研鑚と国際教育に関する講義を主体に、近郊の大学、財団、国際機関等の視察も組み合わせた効果的なプログラムで、参加者から高い評価を受けました。
 
 
 
・ ヤングリーダー奨学基金運営担当者交流会議
 第52回全米留学生問題協議会(NAFSA)年次総会が、米国カリフォルニア州サンディエゴ市で開催されるのを機に、ヤングリーダー奨学基金運営担当者を対象とした交流会議を、2000年5月26日から6月1日にかけて同市で開催しました。会議には56大学の代表が参加し、各大学の基金・プログラム運営状況を披露したほか、ネットワーク内部の協力・交流を促進する方法等について議論を行いました。参加者からは、相互理解が深まり協力関係の基礎が築かれたとの評価を受けました。当財団にとっても各大学代表との人的つながりがより緊密となった点で大変有意義でした。
 
フォローアップ・プログラム
 
・ 共同研究・交流(JREX)プログラム
 ヤングリーダー奨学基金対象校の大学院生が主体となって実施する学生の共同研究、または交流活動を支援しています。奨学生5名から成る選考委員会により審査が行われ、本年度は、99件の申請のうち26件(6カ国:12校)のプロジェクトが採択されました。また、前年度に実施されたプロジェクト26件を評価した結果、プリンストン大学(米国)の学生をリーダーとするチームに優秀賞10,000米ドルを授与し、その成果を、ナイロビ大学(ケニア)の学生をリーダーとする1チームの成果とともに、ワーキングペーパーとして出版しました。
 
 
<実績>
2000年度支給 26プロジェクトヘの奨励金総額 130,000米ドル
優秀賞 10,000米ドル
ワーキングペーパーNo.15,16印刷費(各々500冊) 758,320円
ワーキングペーパーNo.15に付随するビデオ制作費(500本) 400,333円
 
No.15 The Social Impact of Solar Rural Electrification in Kenya and South
Africa,(2000 JREX Award of Excellence)
2001;by Richard Duke,Princeton University;and Jason Anderson,University of California at Berkeley
 
No.16 The Internet and Its Influence on Management,2001;by Krystyna Golonka,Jagiellonian University;and Aneta Lipinska,Jagiellonian University
 
・ 日本訪問プログラム
 ヤングリーダー奨学金受給者を対象に、研究や交流活動を通して日本への理解を深めることを目的に奨励金を給付する事業で、本年度は、申請のあった7件のうち次の6件に奨励金を給付しました。
 
<実績>
・ Ken Schoellhammer   637,860円
ジュネーブ大学国際関係大学院の修士課程に在籍する奨学生が、東京大学、国際基督教大学および青山学院大学を訪問し、博士論文「日本の国連対策」に必要なインタビューを行うとともに、国際政策研究所や国連大学で情報・資料収集や研究活動を行いました。
 
・ Johan Matthijs Havenaar   681,830円
ユトレヒト大学精神医学部の教授でありメディカルセンターの精神科医でもある奨学生が、厚生省(現厚生労働省)、埼玉医科大学、(財)放射線影響研究所、長崎大学、東京都立墨東病院等を訪問し、日本における精神衛生に関する研究、特に放射線事故患者に対する対応等のためのインタビューや資料収集、研究活動を実施するほか、上記訪問機関において講義を行いました。
 
・ Ai Guo Xu   999,650円
北京大学法学部の奨学生で、同学部の講師をしている受給者が、東京大学、名古屋大学、同志社大学および北海道大学を訪問し、帰国後出版予定である日本の民事法に関する論文のために、インタビューや資料収集、研究活動を実施しました。
 
・ Chrysoula Michailidou   675,480円
アテネ大学大学院民事法修士課程に在籍する奨学生が、日本とギリシャの司法システムを比較・研究し、研究成果をギリシャの法学専門紙に掲載することを目的に、東京地方裁判所、東京簡易裁判所、千葉地方裁判所、最高裁判所等の裁判を傍聴するとともに、比較民事法研究所、東京弁護士会等における日本の法律事務所のあり方を学び、さらに早稲田大学法学部で開催される民事法に関するセミナーに参加しました。
 
・ Xinsheng Wang   993,210円
北京大学大学院史学科に在籍する奨学生が、松下政経塾、新潟大学、専修大学、東京大学、中央大学、京都大学等を訪問し、博士論文「戦後日本の政治システム改革」に必要なインタビューを行うと同時に、「“55年体制"の改革と変貌、また、その日本経済に対する影響」に関して、研究活動、情報・資料収集を行いました。
 
・ Bilal Erdem Denk   525,120円
ウェールズ大学カーディフ校法科大学院に在籍し、アンカラ大学の奨学生である受給者が、国立国会図書館、東京大学資料編纂所・法学部図書館、外務省外交史料館、北海道大学図書館等を訪問し、「日中間における尖閣諸島論争」に関し、研究活動、情報・資料収集を行うと同時に、日本の国際関係学者及び国際法の専門家にインタビューを行いました。
 
 いずれの奨学生も、所期の目的を達成したばかりでなく、日本に対する理解を深め、人的ネットワークを醸成することができました。
 
・ 大学教職員交流研修プログラム
 ヤングリーダー奨学基金設置校の教職員を対象に、大学間の学生の交換・交流を促進するための奨励金を提供します。関連大学の教職員が、国外の相手校を訪問または相手校の教職員を招聘し、教員の場合は、短期の講義のほか、カリキュラム開発に関する協議等を行います。職員の場合は、交流協定の交渉や準備等を行います。
 本年度に申請を受け付けた8件中、奨励金を支給したのは5件でした。前年度に内定していた3件を加え、計8件に支給しました。ヤングリーダー奨学基金対象校からヤゲロニア大学、重慶大学、チェンマイ大学、オレゴン大学、カリフォルニア大学バークレー校の5教授が各々国外の提携校等を訪問したほか、テキサス大学オースティン校とベングリオン大学の2教授が相互に訪問し合い、共同事業の開発を進めました。
また、神戸商船大学から1名の教授が世界海事大学において客員教授として講義を行いました。
 奨励金を受給した教職員は、各々、当初の目的を達成したばかりでなく、今後の相互交流協定の制定・充実を図るための、より緊密なネットワークを形成することができました。
 
・ 運営・企画推進事業
 内外の識者・高等教育の専門家5名からなる第3回奨学事業部国際諮問委員会を2000年10月20日に開催し、事業の評価、企画、中長期事業計画の策定など奨学事業部の運営、企画全般に関する諮問を行い助言を得ました。
 
日本語教育基金プログラム
8,538,240円
 
 日本語教育基金は、海外の日本語教師の養成を目的とする奨学金・奨励金事業です。財団が直接学生に奨学金を提供するのではなく、財団から寄贈された基金(150万米ドル)の運用益を使って、大学が独自の運営委員会の決定により学生あるいは教員に奨学金を提供します。基金の寄贈は日本財団が行い、基金事業の運営は当奨学事業部が担当する共同事業です。
 1994年に事業が開催されて以来、これまでに世界6カ国8高等教育機関にこの基金が寄贈され、学生または教員に奨学金・奨励金が給付されています。
 
基金運営事業
 
・ 基金既設校の訪問
 基金既設校については、インドネシア教育大学、ブカレスト大学、マッコーリー大学、グリフィス大学、クイーンズランド大学、モナッシュ大学、マッセイ大学を訪問し、基金およびプログラムの適正かつ効率的な運営の実施や、中長期計画について話し合うとともに、教員および奨学金受給者とも懇談しました。
 
・ 基金運営担当者会議の開催
日本語教育基金設置校の基金運営担当者15名を東京に招聘し、2000年4月17日から18日の2日間にわたり「日本語教育基金運営担当者交流会議」を当財団にて開催しました。本会議は、前年度(1999年5月31日から6月2日に開催)に引き続き第2回目として開催した会議で、教員の研鑚、カリキュラム開発、奨学生の公募方法、奨学金支給ガイドライン、中長期計画等について討議しました。
 また、日本語教育に造詣の深い識者から聴講する機会を設けて欲しいとの運営担当者の要望に応え、渡部昇一上智大学教授に「日本語教育について」と題する講演を依頼し、夕食会を兼ねた講演会を開催しました。
 さらに、各校の運営担当者と個別に面談し、基金やプログラムの運営について詳細な報告を受けることができました。
 
 
世界海事大学奨学金プログラム
116,735,475円
 
 海事分野のリーダー育成を目指して、アジア太平洋を中心とする発展途上国からスウェーデンのマルメ市にある世界海事大学(WMU)へ留学する学生に奨学金を提供する事業です。
 
奨学金給付
 
 本年度は14カ国から1年生25名、16カ国から2年生23名、計48名に各々21,000米ドルの奨学金を給付しました。2000年10月の卒業式前夜には、奨学生を対象とした「日本WMU友の会」レセプションを開催し、日本と奨学生のネットワーク形成に努めました。
 
・ 奨学生日本研修
 世界海事大学の1年目の奨学生を研修のため日本に招聘し、海事関連施設の視察や海事関係者との交流を行うことにより、日本に対する理解促進を図りました。
 本年度は24名の奨学生が2000年9月17日から24日まで滞在し、運輸省(現国土交通省)、海上保安庁、船舶技術研究所、電子航法研究所、日本海事協会、日本郵船横浜コンテナ・ターミナル、住友重機械工業株式会社横須賀造船所、海洋科学技術センター、メガフロート、海技大学校、神戸港、神戸商船大学等を視察しました。また、一行の滞在中、当財団において運輸省(現国土交通省)海上技術安全局安全基準課の池田陽彦国際基準調整官、ならびに日本郵船株式会社運航技術グループ品質保証チームの小山智之品質システム主任監査員を講師に迎えて、「海事環境保全に関する国際基準と日本政府の立場」、および「民間における環境保全の取り組み」というテーマで講演会を開催しました。この訪問は、奨学生にとって日本の海事事情を知る絶好の機会となったと同時に、海事関係者との人脈づくりにも大いに役立ったものと思われます。
 
 
地方行政官育成奨学金
15,337,548円
 
 経済・社会のグローバル化がもたらす地域社会の新たなニーズを反映した地方行政のあり方を模索する若手行政官を対象に、海外の高等教育機関で修士学位を取得するための奨学金を提供しています。海外留学を通して世界各国の文化・慣行・制度等に関する相互理解や情報交換を促進することにより、国際性豊かな地方行政官を育成することを目的としています。1998年度に開始された6年間の継続事業です。
 本年度は、次の4名に奨学金を給付しました。
 
<実績:1999年6月離日、2001年6月帰国予定>
受給者(継続)   留学先   奨学金額
柴田未来(茨城県)   米国シアトル大学大学院行政学修士課程   US$36,000
         
馬場伸一(福岡市)   米国ポートランド州立大学
ハットフィールド政治行政大学院修士課程
  US$35,000
 
<実績:2000年7月離日、2002年6月帰国予定>
受給者(新規)   留学先   奨学金額
中越康友(消防庁)   英国キール大学国際関係学修士課程   4,200,000円
         
牛尾 守
(北海道日高支庁)
  英国リーズ大学開発学修士課程   3,600,000円








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