川内 プロセスを提示する時に、その地域の人が使いやすいと思っているトイレを拾い上げて、「その使いやすい理由を調べてください」と、要求として出すこともある。具体例(平面図・写真)をつけてする提示の仕方もあるが、「自分たちでどこがよいか探しなさい」という提示の仕方もあるということだ。これは、地域の資源の掘り起こしにもなるし、役に立つと思う。
森田 障害のある方もない方も使える一つのトイレというのは、無理なのか。
川内 トイレの場合は選択肢だと思う。洋式と和式とか、2m角とか、それをいかにわかりやすく表示するか、そのことで対応するほかない。一つ一つの選択肢が、他の人にもより使いやすいような設備になっていればいいと考えるべきだ。一つのもので、みんながOKというのは今のところはまだできない。
森田 どちらかが我慢をしてということか…。そうした究極の形がユニバーサルデザインの最終的な目的なのかと思っていた。
川内 住宅の場合はそこまでできるが、公衆トイレの場合は、メカに頼ると壊れやすいとか、操作ができないとか、難しい問題がある。住宅とは違うと考えないといけない。
西澤 100点満点のものができなくても、80点ぐらいなものが可能としたら、そういうものを作るのが早くはないか。何にしても、作った後で必ずしも地域の特性に合うとは限らないとなると、整備に取り組みにくくなるのではないか。
川内 住民参加の場合問題になるのは、“住民って誰なんだ”ということ。とりあえず今やれているのは、広報して、関心のある人から始めてもらい、影響のありそうな範囲に対しては地域に情報提供をしていくことだ。参加してくれる人の間で進めるしかない。
大事なのはできた後の事後評価のプロセスだと思う。トイレは、1個作ったらまた次ぎのトイレも作らないといけないはずなので、そこで同じ手法が踏襲できるし、前のトイレでの問題点も次ぎのトイレに情報として伝えられる。次々と作っていくにつれて、いいものができていくという仕組みにはなっていくだろうと思う。今までのように、作りっぱなしよりはるかにいい。今までは、失敗の情報が次ぎに伝わっていなかった。
草薙 建設省の、ハートビル法の改正の中で、不特定多数という考え方を見直そうという意見が出ている。「特定多数とはどういうことかという考え方もできるのではないか」という意見だ。日本財団方式がone of themで終わってしまわないよう、抽象化する考え方を持っていることが大事だ。
小林 考え方の多くを出していったほうがよい。
草薙 モデルとしてはできると思うが…。
小滝 全国金太郎飴で作っていくのは、具合悪い。
川内 事例については、毎年「グッドトイレ10」や雑誌を見ればいろいろあるし、資料として提供することはある。しかしそれだけでなく、事例は、「どういう過程を踏んでトイレができました」ということを、例えば日本財団のホームページで出していくなどの提示の仕方もあると思う。結果だけでなく、プロセスも含めた事例の提供をしないと、あまり意味がないのではないかという気がする。