●作り手側から見た公共トイレの現状
トイレ、特に障害のある人の利用を想定した公共トイレについて、私たちは決して充分な情報を持っているわけではありません。もちろん、10年前より確かに変わってきているし、5年前より確かに変わってきてはいます。が、それが作り手側の目論見どおりの成果を上げているのか、利用者の満足に結びついているのか、その点については、明確にはわかっていません。ひょっとしたら、作り手側が勝手にじたばたしてそれらしい工夫をしているだけで、使い手側にしてみればどうでもいいことをやっているだけなのかもしれません。
現実は、設計の現場における意識が高まっているとか、経験が積み上がっているというより、機器メーカーのマニュアル頼みで、結局はそのマニュアルの内容次第という状況です。しかも個別の建築物では、マニュアルにない柱型があったり、マニュアルとは異なる位置に出入り口がついていたり、充分な空間が取れなかったりと、なかなかマニュアルで想定した条件どおりにはいきません。そんな時、状況に合わせた柔軟な対応が必要なのにもかかわらず、そのままマニュアルにある例をはめ込んだため、使いにくいものになっていることも少なくありません。
一方、いったん作ってしまえば作り手側の仕事は終わりで、利用者がそれについてどんな評価をしているかは作り手側に伝わりにくいし、仮に伝わっても、その気できちんと調査したものでない限り、それらの評価はあくまで利用者個人のレベルでの意見にしか過ぎません。作り手側にしてみれば、そのような状態でレベルアップを求められても、どうしていいかわからないというのが、正直な気持ちではないでしょうか。