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3 行政はどうやって公共トイレを作っているか

 

上幸雄

日本トイレ協会事務局長

 

●公共トイレとはどういうものか

 

私たちが家を一歩出ると、そこは公共の場所になります。そこでは原則的に、誰でもが自由に行動できる反面、モラルとしてあるいは法律的に、してはいけないこともあります。トイレに関していえば、路上で排泄行為をしてはならないと、法律で定められています。その代わり、行政には“清潔の保持”が義務づけられており(「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下「廃掃法」)第5条)、その業務を担当する市町村は、ごみの清掃や公共トイレの整備をしなければならないことになっています。

公共トイレとはどんなものでしょうか。一般に、行政が作るトイレは公共トイレと呼ばれています。つまり、公共トイレとは、公共の場所に行政が設置したトイレを意味しています。また、公共的な場所に民間が設置したトイレや民間が作った公共的役割を持ったトイレも公共トイレと呼ばれます。例えば、私鉄が駅に作ったトイレ、デパートのトイレ、神戸市の市民トイレ(商店などがトイレを開放している)がそれに当たります。したがって、「公共トイレ」とは、一言でいうと、“誰でもが自由に使えるトイレ”のことだといえます(図1・2)。

この稿では、前者に焦点を絞り、その法的根拠、設置主体、バリアフリー化やユニバーサルデザイン導入の現況について概観してみたいと思います。

 

●行政が公共トイレを整備する根拠は何か

 

市町村が公共トイレを設置するのは、前述したように、「廃掃法」で街の清潔の保持が義務づけられ、公共トイレを整備しなくてはならないことになっているからです。そのほか、「都市公園法」や「自然公園法」でも、公園施設の一つとしてトイレの設置が定められています。ただし、それらの条文の中に、どのようなトイレを、どのくらい設置しなさいといった規定はありません。公共トイレの整備内容は、各市町村の判断にゆだねられているといっていいでしょう。

 

■廃棄物の処理及び清掃に関する法律(抜粋)

(目的)

第一条 この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)をいう。

(清潔の保持)

第五条 土地又は建物の占有者(占有者がない場合には、管理者とする。以下同じ。)は、その占有し、又は管理する土地又は建物の清潔を保つように努めなければならない。

2 建物の占有者は、建物内を全般にわたって清潔にするため、市町村長が定める計画に従い、大掃除を実施しなければならない。

3 何人も、公園、広場、キャンプ場、スキー場、海水浴場、道路、河川、港湾その他の公共の場所を汚さないようにしなければならない。

4 前項に規定する場所の管理者は、当該管理する場所の清潔を保つように努めなければならない。

5 市町村は、必要と認める場所に、公衆便所及び公衆用ごみ容器を設け、これを衛生的に維持管理しなければならない。

6 便所が設けられている車両、船舶又は航空機を運行する者は、当該便所に係るし尿を生活環境の保全上支障が生じないように処理することに努めなければならない。

 

 

 

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