日本財団 図書館


図3は、実際の地球を、地球からはるかに離れた位置から撮った写真です。アメリカの惑星探査機「ガリレオ」が木星探査に出かける途中、1992年12月16日に6万2000キロメートル彼方から振り返って撮影した地球の写真なのです(上半分が北半球です。地球の下側に南極大陸が見えます)。ご覧のとおり、右から太陽光線が当たっているので、半分だけが明るく写っています。左上にある半円は月です。地球と同じように、右半面だけが太陽光線に当たっています。地球と月が、相似形に欠けていることに注目してください。地球も月も球形です。そこに同じ方向からの光が当たると、相似形になるのです。

 

017-1.jpg

図3:木星に向かうアメリカの惑星探査機「ガリレオ」が1992年12月16日、地球から6万2000km離れて撮影した地球と月。(lnternet: NASA GALILEO MISSION Educator'sslide setより引用)。月は暗いので、実際の明るさより強調してあることに注意。北極が上、南極が下です。

 

昼と夜の交代

私たちが夜空に見る月に対しても、同じことがいえます。半月になったり、三日月になったりするのは、太陽光線が当たっている方向が変化するからです。図3から想像されるように、宇宙に行くと三日月と相似形の地球を見ることができます。地球から十分離れれば、私たちが地表から見る月と同じ形の地球が見えるということです。想像をたくましくして、地球を宇宙船、月を地球に見立ててみましょう。将来、宇宙船に乗って惑星観光ができるようになれば、現在、私たちが地表から眺める月と同じような大きさで同じように欠けた地球を見ることになるでしょう。そのとき、三日月の地球のどこに日本列島があると思いますか。月が見える夜に、月を見ながら想像してみてください。

さて、OHPの光を当てながら、地球儀を回転させてみましょう。皆さんの位置から見ると、昼の方向が変化せずに、地球儀だけが回転しています。ところが、テレビの画面を見ると、地球は回転していないで、昼と夜の境目(明暗境界線)が、東から西に移動していく様子がわかります。「宇宙を見る目」を使えば、昼と夜の交代は、私たちが地球とともに回転していて、昼の世界から夜の世界に移動していることが実感されるでしょう。

 

大気も海も大きな渦巻き

地球表面の7割は海水で覆われています。また、海と陸の上を大気が覆っています。海も大気も、基本的に地球とともに回転しています。その意味で、大きな渦巻きなのです。私たちも地球とともに回転しているので、その渦巻きを実感することはできません。風や海流は、地球の自転にともなう渦巻きからみたら、微々たる変化です(大気の地球回転からのずれは1割程度、海水の動きは1%以下です)。しかし、私たちから見ると、その微々たる変化だけが風や海流として感じられるのです。

 

台風の発生

今年は、台風11号と15号が日本列島に接近して、大雨をもたらしました。台風は大気の渦巻きで、熱帯海洋上で発生します。そのいくつかは北上して、日本に接近します。風のない熱帯の海洋上で、突然、台風の渦巻きが発生するのは、一見、不思議な気がします。しかし、実は無風であっても、大気が地球とともに回転していることを考えれば、台風の発生を理解することができます。

図4は、台風の発生を理解するための装置です。2本の腕の先におもりがつけてあります。それが空気のかたまりのつもりです。空気は地球とともに回転していますので、腕をゆっくり回転させます(図4-a)。この状態は、地球の上で見ると無風の大気に対応しています。次に、腕を縮めてみましょう(図4-b)。すると、空気塊の回転は急に速くなるのがわかると思います。空気の渦巻きは、中心に向かうほど速く回転するようになるのです(この原理は、フィギュアスケートのスピンと同じです。物理学の角運動保存則にしたがいます)。実際の熱帯海洋上の大気では、積乱雲が発達すると周囲の空気を集めて渦巻きが強化されます。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION