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登校拒否の子に学びながら

―澄夫の登校拒否を中心に―

《スコレー札幌》栄花寛

 

不登校期間 中学2年6月〜12月(転校して再登校) 14歳男子

 

《家族構成》

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はじめに

80年代後半から登校拒否の子が全国的に増加し、今日では13万人を超えている。わが子が不登校になり、驚きあわてた父母から「学習したいが登校できない…」「怖くて登校できない」「昼夜逆転の生活…」といった相談を寄せられるようになった時、小学校教師だった私は、せいぜい相談機関を紹介することしかできなかった。しかし、各相談機関の対応は、「個人の性格の弱さ」とか「子育てのまずさ」を指摘し、「子どもが強くなり、親は登校するのを待つ」といった指導の域を出なかった。こうした指導では、子どもはいっそう落ち込み、父母は自分の子育てを責め続けるばかりで、状況の好転は見られなかった。

1989年、息子や、大学生になった小学校での教え子たちと図り、心を癒し、学びたい子の援助ができる場所として、「フリースクール・スコレー札幌」を開設した。

今日までの12年間に、登校拒否の小、中学生三百数十人が通い、そのほとんどが再登校、進学を選択し、いきいきと生活している。

 

スコレーのねがい

スコレーでは、次のことを大事にしている。

1] 心身の疲れを癒せる居場所とする。

2] 本人が自発的に語るまで、登校拒否の理由を問わない。

3] 登校刺激をしない。

4] 自律・自立の援助をする。

5] 自分の生き方を毎日考える。

6] 学ぶ楽しさと基礎学力獲得の援助をする。

 

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沙流川キャンプの時の川下り。

 

登校拒否の子に共通するもの

登校拒否の原因、理由は多種多様でここでは省略するが、登校拒否の多くの子どもに共通することは、

1] 「行かなければならない学校を休んでいる」という罪悪感・劣等感にさいなまれている。

2] 「親・家族に心配をかけている」と自責の念に苦しんでいる。

この2つが払拭されなければ、新しい一歩を歩み出せない。小学生でありながら、登校を断固拒否をしている強さは人間の一側面ではあるが、人間の積極的な一側面として評価し、人間としての自信を獲得する援助をしなければならない。

 

 

 

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