ここに至るまで何度か学校に赴き、担任の先生と話し合い、学年主任の先生にもお目にかかり再登校への準備を進めた。カウンセラーの指示で、Aには伝えていないことはできるだけ伝え、Oさんからは学校やクラスの情報を、Kさんからは再登校後の子どもの支援の手立てのアドバイスを受ける。学校側へ伝えるべき要点も話し合った。一つ一つのことが大変役立ったし、何より私自身の不安を取り除いてくれた。
再び学校へ
3月の春休みを楽しく過ごし、担任の先生もクラスメートも新たに、いよいよ新学期が始まった。Aは4月いっぱいまでは別室で過ごし、校内では絶対に同級生と接触することを拒絶したが、桜井先生と約束し、信じられないことに5月連休明けからホームルームに入った。だれかいっしょにクラスに行ってくれる人をと心配したが、本人の強い希望で、ひとりでクラスに向かった。
私はホームルームが終わるまでの時間、車の中で待ちながら、通い慣れた教育研究所の前から、桜井先生とOさんに連絡した。感動と誇らしさで、何度も涙をぬぐった。ホームルームだけ参加し、Aは緊張しながらも明るい笑顔で帰ってきた。私の安堵は限りなかった。
夏休みまでの目標、完全登校の過程では経験者のKさんのアドバイスがとても参考になった。ともすると不安になる今の状況を指し示して下さった。
Aは次第に目標を定め、自分を励ましながら前進していった。仲の良い4人の友達ができ、家庭でも生き生きと学校の話をするようになった。
Aが自分で歩みを始めた頃、奇しくもお知りあいの家庭を今度は私たち家族が紹介することになった。今では、共に励まし合える大切な友人となっている。

卒業

Aは新たな道を切り開き、先生方やクラスメート、支え続けて下さった多くの方々の祝福のうちに、この春新しい高校へと入学した。OさんやKさんと、合格祈願はどこの神社に行くべきか等とにぎやかだったが、合格発表までわが子のように気をもんでくれた人たちがいたことを、当のAは全く知らない。だれもが思ってもみなかったひたむきな挑戦をし、高い山を登り切ったような爽快感と達成感を味わったに違いないと、父親をはじめ私たち家族は心から喜んでいる。
終業式の日(Aにとっての卒業式の日)、卒業証書と共に進歩賞をいただいた。
父親に照れくさそうに報告した娘を見て、私は胸がいっぱいだった。この1年半、私はたくさんのことを見聞きし、思いがけないほど大勢の家族が、打開の道を探し出せないでいることを知った。時が穏やかに解決してくれるものもあるが、Aは苦しんだ分だけ、得た幸せも大きかったと確信している。
これからの高校生活に不安がないとは言えないが、これまでの経験を糧に、自分の人生を大切に過ごしてくれるものと信じ、祈っている。
