〜はじめに〜
平成12年度の小・中学校の不登校児・生の人数は、文部科学省の学校基本調査によると前年度より約4,000人増加し、13万4,282人と過去最多となりました。学校嫌いが理由で年間30日以上登校しない児童・生徒の存在は、まさにだれにでも起こりうる事象として単に学校教育の問題にとどまらず、大きな社会問題となっております。
とりわけ自宅(自室)から外に出ようとしない引きこもりを伴う不登校は、長期化すると将来の社会適応がむずかしくなるケースも多く報告されており、家族の悩みも深刻と言わざるを得ません。
日本財団ボランティア支援部では、不登校の実態や自立回復までのきっかけや経過を42の体験事例としてまとめ、現在この問題で悩まれている方々に、有効な対応方法の一端を知っていただくことにいたしました。
本書は、「経験者」「保護者」「フリースクール」「カウンセラー」「資料」の5編で構成されております。掲載させていただいた事例は、プライバシーに配慮しつつ、寄稿内容ができるだけ損なわれないようにこころがけました。また、編集にあたりましては、当財団に設置した専門家からなる不登校・引きこもり研究会の協力を得て作成いたしました。
多くの方に「不登校」に対する理解を深めていただくと同時に、現在悩まれている当事者の方々には、「不登校」を越えて自分にあった道を自信をもって歩まれる日が一日も早く来ることを願ってやみません。
日本財団
理事長 笹川陽平