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【清野】 今、海岸の自然を守る市民運動は全国各地で行われていて、その一部は東京湾の三番瀬や名古屋港の藤前干潟といった埋め立て計画見直しに繋がるような、社会的にも大きな影響を与える活動もあります。しかし、全国の津々浦々で行われている市民運動の全てががこのように機能しているわけではなくて、地元の利害と環境保全の狭間で揺れているのがほとんどと言えます。

 

九十九里浜はアカウミガメ産卵地のほぼ北限ですが、かつては多くのウミガメが産卵のために九十九里浜に上陸しました。しかし近年はその数もめっきり減ってしまって、60kmの海岸線で年間3〜4頭程度となってしまいました。その理由には、上陸できる砂浜が減ってしまったこともありますが、それに加えて、我々人間の一方的な海岸利用も大きな要因となっています。

 

日本の生活が豊かになった高度成長期を境に、レクリエーションとしての海岸利用はその姿を大きく変えました。海水浴場のある砂浜には恒久的な海の家が建ち並んで、駐車場も整備され、利用者の利便性は格段に向上したのですが、本来国有地であるはずの砂浜が、なし崩しのうちに民間利用されるようになったのも事実です。また、海岸への車の乗り入れも4輪駆動車の普及につれて増大しています。

 

一方で、最近は海辺の環境保全に対する関心が高まる中で、特にウミガメの保護活動が太平洋側の各地の海岸で行われています。自治体でもこうした市民の動きを踏まえて、自然保護に関する様々な条例を制定しつつあります。九十九里浜では1998年(平成10年)4月に千葉県立自然公園条例を改正して、九十九里浜全域で車両の乗り入れ規制を実施しています。こうした動きは千葉県以外でもあって、静岡県と愛知県の18市町村に跨る全長115kmの砂浜海岸である遠州灘では、徐々に車両乗り入れ規制の動きが進み始めていて、すでに25kmほどの海岸で規制が実施されています。

 

いずれにせよ、我々のレクリエーションが自然へ与えるインパクトは、生活水準の向上に伴って、より大きなものへと変化していることは事実です。日本中から自然海岸が消えて行く中、利便性を少々我慢してでも、残された数少ない浜の自然を次の世代へ残すための視点が、行政にも市民にも求められていると思います。

 

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産卵後、夜明けの海へ帰るアカウミガメ

 

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人工構造物のない自然な砂浜(高知県大方町の入野海岸)

現在の我が国の砂浜の海岸で、人口構造物のない海岸はほとんど皆無となっている。高知県の入野海岸は自然のままの砂浜が残る数少ない海岸だが、構造物のない自然のままの砂浜を美術館として利用するという自治体とNPOを中心とした試みは、海岸利用の一つの方法として興味深い。

 

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浜に打ちあがったミズナギドリ類

初夏の九十九里浜では多くのミズナギドリ類の死体が漂着する。ミズナギドリ類は渡り鳥で、夏の時期は北へ移動するが、移動途中に空腹のため力尽きたものと言われている。

 

 

 

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