砂浜が広がった理由というのは、この場所が片貝漁港の北側に位置しているということに起因しています。すでにお話したように、片貝以北の九十九里の海岸線では南下するように沿岸流が流れていて、遠く約30kmも離れた屏風ヶ浦の崖が削られて流れ出た土砂が、この沿岸流に乗ってゆっくりと流れて来ます。そうして片貝まで来ると、片貝漁港の沖に長く突き出た防波堤によって沿岸流が遮られた結果、片貝漁港の防波堤の北側で砂が堆積するようになったのです。
片貝漁港は砂浜を掘り込んで造った港ですから、放っておけばまた砂が溜まります。漁港関係者からすればこの砂の堆積は非常に厄介なものですから、漁船の航路確保のためにも港内に砂が入り込まないよう漂砂を遮る目的で防波堤を造る必要があったのです。確かにこの防波堤によって一時的には効果がありますが、防波堤の外側(漁港北側)にはせきとめられた漂砂がどんどん溜まり、最後には防波堤は砂で埋まってしまうので、さらに防波堤を沖へ伸ばさないとなりません。これを2度3度と繰り返すうちに防波堤は長く複雑な形状に延長され、その度に砂浜も前進を続け、結果的に300m近く砂浜が広がったのです。