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安全上の効果:後述の荷役中・荷役後の対策を実施する基礎として重要である。

実行上の問題点:荷役に関わる各船特有な事項は荷役前の打ち合わせで確認せざるを得ないが、安全に関わる各船に共通な知識は、荷役現場で担当者(乗組員とフォアマン)間の打ち合わせのみでは不十分であり、船社及び荷送人双方において、十分な教育を実施し、現場作業に反映する必要がある。荷役現場における安全に関わる共通認識がない状態で、安全対策を現場(乗組員とフォアマン間)の打ち合わせのみに依存すると、逆に運用(荷役)上のトラブルを招き、実質的な安全へ結びつかない可能性がある。

(A-2-i) 水分値計測

概要:剪断強度の評価のための水分値計測を行う。なお、貨物の価値を決定する意味での水分値計測は従来から行われている。

安全上の効果:剪断強度と(従来計測されている)水分値の関係が明らかになり、高い水分値の貨物を積載しないことに役立てば、安全上効果がある。

実行上の問題点:貨物の種類により水分値と剪断強度の関係は大きく相違することから、如何なる水分値で貨物の剪断強度が不十分と考えられるかを明確にするため、貨物の水分値と運送経験に関する実績データを積み重ねる必要がある。

(A-2-ii) 強度評価による貨物の選定

概要:実際に積付ようとする貨物(ストックパイルまたはその一部)の剪断強度を評価(平成11年度日本海事検定協会IMO対応委員会報告書別冊参照)し、剪断強度の高い貨物を出荷し、剪断強度が低い貨物は出荷しないようにする。

安全上の効果:安全上は船積み前に充分に乾燥しておくことが望ましいが、それが困難な場合、次善の策としては、ある程度の効果が期待できる。

実行上の問題点:試験に手間を要する。

(B-2-i) (荷役中の)試料採取・評価

概要:荷役中に適宜試料を採取し、剪断強度を評価する。「(B-2-ii)高水分貨物の積付拒否」のための判断材料と位置付けられる。また、積付や操船の際の参考資料が得られる。

安全上の効果:試料採取・評価により、剪断強度の低い貨物を船倉の下部に積み付け、船倉の上部にはなるべく乾燥した貨物を積み付けることも安全上は有効と考えられる。しなしながら、定量的な評価はなされていない。

実行上の問題点:以下の理由により荷役中の剪断強度の評価が困難となっている。

1] 船上で荷役中に直接剪断強度を測定することが困難であることから、水分値を計測し、剪断強度を類推する手段が取られていること。

2] 荷役中に船上で試料を採取すること自体が危険を伴い困難であり、抽出サンプリングしか実施できない。

3] 各バージにより貨物の水分値が異なる。また、同一バージであっても箇所により水分値が異なることから、貨物全体の剪断強度の把握が極めて困難となっている。

(B-2-ii) 高水分貨物の積付拒否

概要:水の浮いているバージ上の貨物の積付を拒否する。

安全上の効果:貨物の平均水分値が低い場合であっても、貨物のパイルの中に水分値の高い層があると、荷崩れの危険性が生じる。こうした危険性の低減には有効と考えられる。

 

 

 

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