オジンは太一と正すけに手を出してごらんと言った。二人が手をさし出すと一つずつ、ながめた。太一の手の平をなでながら
「きみは、かしこい子だね。そして、努力家だ。そう、九十すぎまで元気に生きる。人に愛されて人を愛して、誠実にしあわせになる」
それから太一より少しほっそりした正すけの手を見た。
「きみはそこ力がある子だね。自分の道を切り開いていく力がある。そして、やさしいね。きみも長生きするよ」
あの満月の夜以来、オジンは消えた。オジンがいつ島から消えたのかだれも知らない。
島の浜は、また月と海だけの世界になった。