6. 遮熱単気筒エンジン
6.1 遮熱エンジンの構造
6.1.1 放熱量計算
往復運動形エンジンでは、時々刻々変化するシリンダー内のガスの状態に合致した熱伝達を基に放熱熱量を計算すると実験値とほぼ一致することが確かめられている。熱伝達率については、Washini、粟野誠一等が計算式を示しているが、Pflaumの式でも実験値と合致する様計算式を補正すると十分に使えることが判っているのでこれらの式を参考として、シリンダー上面、ヘッドライナー側面、シリンダー、ピストン上面、副室を分割して放熱量を計算した。
計算式は、次式を用いた。

Q:放熱量 Kcal/h
K:熱通過率 Kcal/m2・h・℃
As:放熱面積 m2
Tg:ガス温度 K
Tc:冷却流体温度 K
αg:ガスから壁への熱伝達率 Kcal/m2・h ・℃
Ag:ガスから壁への熱伝達面積 m2
λ1、λ2:壁材料の熱伝導率 Kcal/m2・h ・℃
σ1、σ2:壁材料の厚さ m
Aw1、Aw2:壁材料の伝熱面積 m2
αc:冷却流体の熱伝達率 Kcal/m2・h ・℃
Ac:壁から冷却流体への熱伝達面積 m2
この計算を実行すると、燃焼室からの熱移動は燃焼ガスから燃焼室への熱の移動が支配的で、燃焼室の放熱側に冷却水が存在すると、燃焼ガスの熱量は容易に放熱される。従って、燃焼ガスから冷却水側に遮熱構造を設ける必要がある。遮熱構造として有効な手段は、燃焼室の外側に空気層を設けること、熱伝導面積(式(2)ではAw1またはAw2)を極端に小さくすることが有効である。燃焼室の外側に空気層を設けると熱流の遮断を効果的に行う事が出来、その他は1/30以下に減らす事が出来る。
しかし、この燃焼室を空中に浮かす事は困難であるため、エンジン構造として十分支持する必要がある。その支持部分はガスケット等で保持しなければならない。ガスケットで保持する場合、連続した固体をガスケットとして選択すると、熱流は容易に流出するが、ガスケットを板状として積層させると遮熱効果がある。板の表面は微視的に見ると凹凸が激しく、その凹凸間に空気が存在するので熱流を防げる効果がある。
従来の実験によると、n枚の板を通過する毎に次式の熱流の減少効果が在る。
λ1R=λ1×(0.8)n…(3)