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5. 排気エネルギー回収システム

5.1 高効率熱交換器の設計・試作・評価及び改良

燃料を天然ガスとし、エンジン燃焼室を遮熱構造とし、燃料エネルギーを最大限に動力に変換し、利用する遮熱形ターボコンパウンドエンジンの開発では熱エネルギーを最大限に活用し、動力に変換しなければならない。図5.10では天然ガス改質エンジンのエネルギーフローを計算し、そのシステムを用いることによるエンジン熱効率を推算した。このシステムの中には4種類の熱交換器が使われている。1つが液体と液体、他の3個は気体−気体の熱交換器である。これらの熱交換器ではその熱交換効率が重要で効率が良いほど熱の利用率がよく、全体の熱効率も良くなる。熱交換器の性能では作動流体の熱伝達率、熱伝導率が影響し、スムーズに熱を移動させるためにはその抵抗が小さいほうが良い。熱通過率の式は次式に示されるとおりである。

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上記の式に熱交換器の諸数字を当て嵌めてみると特に気体側の熱伝達率の値が小さく、熱伝導の大きな抵抗になっていることが解る。材料の熱伝導率の項と比較するとその値は約10倍であり、熱伝達率が大きくならないと熱交換器の性能が向上しないことになる。しかし、全ての項には熱伝達、熱伝導する面積があり、その面積の増減によって熱移動体の熱移動量を制御できる。例えば気体からの熱が固体を通って他の流体に移動するとき、熱伝達面積を大きくすれば熱通過率Kは大きくなる。したがって、気体の通過する部分はその材料を面積のきわめて大きい、フィン形状とする、蛇腹形状とする、等の処置を取っている。しかし、フィンを熱通過面に設けても熱伝達面は3〜4倍程度になるに過ぎず、10倍まで引き上げることは到底難しい。

近年、耐熱金属を発泡体とし、多孔質金属状にする研究が進み、其の用途としてフィルター、などが良いとして多くの研究が進んでいる。この材料は3次元的に金属が絡まり、交差しているので同一体積あたりの外表面積はフィンに比較し、6倍ほどである。この金属を金属平板に接合し、作動流体を通過させれば気体は多孔質材量の隙間部を其の面に衝突しながら通過し、熱を固体に伝達する。固体に伝達された熱は2つの作動流体を隔壁とする前記平板に伝導され、他の作動流体に熱を移動する。他の作動流体側でも熱伝達率が小さいので其の値に見合った熱伝達面積が必要である。

通常の熱伝導体では高温気体側の熱伝達率の割合を10、固体の熱伝導率の割合1、液体側熱伝達率の割合を3とするとK=1/(10+1+3)=0.071、これに対し、多孔質材を用いて熱伝達側の面積を増加させ、熱伝達面と熱伝導面を等価にすることが出来ればK=1/(1+1+1)=0.333となり、熱通過率K(Kcal/m2・h・℃)の値は4.7倍になる。

 

5.1.1 多孔質金属と平板の接合

平板同士をフラックスを用いて接合するのは比較的容易である。ところが多孔質材と平板を接合させることは難しい。平板にフラックスを塗りつけ、多孔質材を重ね合わせ加圧したまま高温炉中に放置すると接合できるはずであるがなかなか接合出来なかった。そこで接合を試みた材料について詳細に検討した結果、次のことが解った。

 

(1) 接合には1300℃以上に加熱出来る雰囲気炉が必要である。

 

 

 

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