日本財団 図書館


知的インフラというのは、レジュメの下の方の注に書いてありますが、研究・教育・情報・コミュニケーションを行うための社会的なハード、またはソフトインフラを指します。実は、これが地方レベルでどのように整備されているのか関心を持って調査してきました。

知的インフラはピラミッド形態を想定しています。第1レベルが国際的な専門研究機関、第2レベルが研究・教育をする国内向けの機関、第3レベルが交流・協力をするための一般市民向け機関、第4レベルが、交流・協力をする行政機関か情報を蓄積する機関と設定しました。具体例を挙げますと、例えば第1レベルは、新潟の環日本海経済研究所などの県庁がつくっている国際研究所です。そして第2レベルが、国立大学とか私立大学の、例えば朝鮮語学科、中国語コース、中国の経済講座、そういうものがここに該当します。そして第3レベルが、横断的な公開研究会、専門学校、市民講座、民間国際交流団体です。最後の第4レベルが、地方のマスメディア、国際交流協会、地方図書館、地方自治体、在外公館になります。

この調査は実数調査です。ロシア、中国、北朝鮮、韓国に対して、新潟市、富山市、金沢市、福井市がどのような交流組織を持っているか調査をしました。ここでは具体的には申し上げませんが、もしご興味のある方は別紙抜き刷り「日本海側都市における知的インフラの比較研究」をご覧ください。実は、これと全く同じスタンダードで、今、中国側で調査をしています。

まず結論の第1点は、第1レベルを比較すると、特に外交上のプロトコルで同じ省と県で比較した場合、日本側が中国側に対して団体数で8分の1から10分の1という状況です。

さらに、非常にショッキングなのは、第4レベルの地方図書館です。一般的な日本の地方図書館にはほとんど外国の本はありません。金沢市には国連の委託図書館があり、英語の本はたくさんありますが、特に中国語の本、ハングルの本、ロシア語の本はほとんどありません。しかし、中国側の地方図書館には、各館ごとに数万冊単位であります。もちろん、そういう話をすると、皆さん一番初めは、南満州鉄道などが残した本ではないかと考えます。確かに満鉄の残した本もありますが、それだけではありません。なぜなら、同様に数万冊単位で、ハングルとロシア語の本もあるからです。例えば長春市だけでも、吉林省立図書館、長春市立図書館、吉林大学図書館、吉林省社会科学院の図書館、この4館を合わせると、日本語の本だけで25万冊あり、これは日本国内の市立図書館と同じぐらいの規模になります。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION