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それから、業界の区分が今までは明確であったという点があります。今は完全自由競争の時代ですが、これまでは国際通信と国内通信に分かれ、また国内通信も長距離と市内に分かれていたとか、固定通信と移動通信等に分かれていたものが、境がなくなってきているというようなことです。ビジネスが相互に依存する関係になって「競争と協調」という形が始まってきました。

実際、5、6年ほど前から、各国のキャリアの間でお互い提携関係を結んで、いろいろ共同でビジネスをやる一方で、また競争するという関係になってきています。この図(資料5頁)は、世界の電気通信業界の間での資本関係や協力関係を絵にしたものです。しかし、この絵を描き始めてからも、嫌になるくらいに変化があります。財団に本日の原稿を出そうと思ったその日にも、KDDとシンガポール・テレコムが、株式を相互に持合いするという発表がなされ、慌てて付け加えたりしました。

この図の中で大きなポイントだけを挙げます。従来は縦割りで、それぞれの国ごとに、例えば、日本では国際はKDD、国内はNTTとに分かれ、またアメリカではAT&Tと地域電話会社とに分かれていました。が、93年に、ワールドパートナズという形で、AT&T、KDD、シンガポール・テレコム、ユニソースを含んだ横の連携ができました。同じく、BTとMCIとでコンサートができ、また、スプリント、ドイツ・テレコム、フランス・テレコムの3社でグローバルワンというまとまりが出来上がりました。

しかし、この構図がここ1年でがらっと変わってきた。御存じのように、MCI Worldcom自体、WorldcomがMCIを97年に買収したものですが、MCIがスプリントを買収するという発表を最近しております。BTとMCIは一緒になってコンサートとしてやっていたのですが、MCIによるスプリントの買収で、この関係が消え始めました。その一方で、BTはAT&Tとジョイント・ベンチャーの会社をつくるといって、今までの「コンサート」に代わり、今年の10月に新たな「コンサート」が発足しました。

グローバルワンの場合も、MCIがスプリントを買収するということでスプリントが抜けてしまいますので、これまでの関係がぎくしゃくしてきます。さらにはドイツ・テレコムがテレコム・イタリアを買収するということでTOBを賭けたのですが、結果はオリベッティがテレコム・イタリアを買収することになり、買収に失敗しました。その過程で、フランス・テレコムはドイツ・テレコムが勝手な行動をしたということで、ここも関係がぎくしゃくしてきています。

 

 

 

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