青木 東京の箱物の悪いところは、ロケーションと、もう1つは、アクセスがあまりにもひどい。ぽんぽんと地図の上でつくっただけだから、人間がそれを利用することを全然考えていない。
日下 戦後、アメリカのまねをして、建築基準法が業務地域、商業地域、工業地域、住宅地域1種・2種・3種、緑地地域とかに決めた。例えば、住宅地域と決めたら、10馬力以上のモーターは据え付けてはいけないとかで、豆腐屋が商売できなくなる。そんな規制がいっぱい書いてある。
勉強してみていいのは準工業地域だけと思った。準工業地域は、モーターを置いて大きな豆腐屋もつくれる。住宅も建てられる。工業も商業も業務も全部入ってもいいのが準工業地域なんです。準工業地域を増やすことを、役所は嫌がるわけです。きれいに分けたがる。
青木 それにしても、全く入り組んで、全然きれいに分けられない。世田谷の住宅街でといっても住宅街だけではない。
日下 しばらくしたら、アメリカで女性の都市計画学者が、ああいうゾーニングはよくない、機能を純化させるべきではない、人間はぐちゃぐちゃになって暮らしているのが一番いいんだという立派な本を書きました。公園まで児童公園、スポーツ公園とか分けている。
公園まで分けるばかがあるかと書いた。昔は、子供が遊んでいる横で、年寄りが散歩をしているから、いじめなどの事件がなかった。
川本 第1次郊外、つまり「電車の郊外」、中央線沿線の杉並区なんかは典型なのですが、相続税が大きな問題になっています。1代目が亡くなって、今、2代目から3代目に変わりつつある。相続税を払うために、せっかくの庭を切り売りして、アパートを建てることが、東京オリンピックのころから行われている。郊外が今、過密住宅地になってしまった。地震のときの危険マップを見ていると、真っ黒になっている。田園調布でも起こっている問題です。
陣内 杉並は、杉並というぐらい、緑がシンボルだったし、イメージの中にそれがある。現実には緑の量がものすごく減っている。
川本 同じ杉並区でも、中央線沿線と井の頭線沿線が違っている。井の頭線沿線は、まだ開発が遅れた第1次郊外です。だから、緑がすごく多い。でも、いずれ第2次郊外化して、緑がなくなっていくと思う。
青木 東京はいろいろな形で、東京の持っているポテンシャルを発掘していきながら、将来を論じていければ、非常にいいかなと思います。