日本財団 図書館


尾島 安くなったら最後に先生が減らされる。

 

石井 そう。だから、いい先生が逃げてしまうということになる。それでいいんです。大いにそういうことをやれば新陳代謝が早くなる。だから、いい人はみんなここにいちゃいかんと思って逃げてしまう。そうすると質が落ちるからマーケットで勝てなくなる。冷酷なことを言えば、自由にやったらいいというところがある。だから、切符が要らなくなることは大きいんです。東京駅のみどりの窓口は要らなくなるから、全部、JAL方式で買えばいい。駅って何、ということになる。

 

ライフスタイル・デザイン

 

日下 乗車券を要らなくするわけ。

 

石井 要らない、携帯電話にあるじゃない。

 

尾島 飛行機に乗って、自分のシートのところがチェックされる。

 

石井 そう、座っていればチェックして。

 

日下 それは大分将来の話ね。

 

石井 案外早いよ。だって、そっちのほうが安いから。

 

日下 荷物のチェックをどうするか。

 

石井 それはあるでしょう。

 

日下 有料道路はどうします。今、ETCなんてやっているが、あれもiモードの携帯電話ですむ。

 

石井 そう。道路側でハードウェアをつくることは全部なくなると思う。あんな高いことをやる必要はない。全部携帯でできる。全部変わるんです。変えたくないところは自動的に、高いものになる。それだけなんです。非常にシンプルなんです。

 

日下 陳腐な議論をしているんだ、建設省(現国土交通省)で。

 

石井 それは使っていないからなんです。使い出したら何でと思うようになります。

 

日下 旧式の機械を3万5,000円で買えと言っているんだ。

 

古川 厚生省みたいに非常におくれた役所でも、ICカードで身分証明とキャッシングと健康保険証と、もう一つ何かを一緒にしようと言っているでしょう。そうしたら、これもタッチ型じゃないから非接触で読みとってぱっとオーケー。

 

石井 変なハードをつくるなということは言っているんです。何千万の人が同じインターフェースで同じものを持っているということはない。自動車の運転と同じで、それをいかにソフトでどれだけモディファイして一般的に普及させるかだけだから。変なハードをつくるとそれを覚えなくちゃいけない。覚えるコストの方が嫌でしょう。そうじゃなくて全部同じだ。

 

古川 厚生省の試案もモバイルに変えるべきだ。

 

石井 そのためには、厚生省と言ったって実際は若い者がいっぱいいるから、若い者は全部iモードでやろうじゃないか。言わなくなってみんな持ち出すね。

 

古川 モバイルがブルブルッと振動したら、きょうは病院の受診日ですよというわけだ。

 

尾島 きょうは石井先生にならってiモードをいよいよ買いますか。

 

石井 ただ、忠告がありまして、ハードウェアだけ買ってというのは無理です。

 

尾島 何と何を買うんですか。

 

石井 だから、そのサービスを一緒にやらないとだめです。問題は先生のライフスタイルに合わせたライフスタイルデザインなんです。

 

古川 建築と同じです。その人のライフスタイルがわからずにつくったら住みにくいでしょう。

 

石井 ところが、みんなハードウェア志向なんです。

 

尾島 パソコン教室に関しては、研究室の若い連中はパソコン教室のアルバイトをやっている。これはパソコン教室ではないですね。

 

石井 これはパソコンではないから違うんです。洋服をつくると思われればいいです。洋服でもポケットをどこにつけるとか、どうだというのがあるでしょう。それは人が要るんです。サービス業です。

 

尾島 ただ、そこらで買うだけじゃだめなんですね。

 

石井 服を買ってくればそれでいいという時代ではないんです。逆に自分にフィットするように、オーダーメード衣料と同じなんです。これはバーチャルな世界なんです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION