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菊竹 いつも石井先生のお話を聞くとIT革命が石井先生からやってくるという感じがいたしましてほんとうに期待をしております。

 

ITとバイオ

 

石井 1999年11月に、僕は2002年に、予定よりも3年繰り上げてヒトゲノムの全解析ができるようですと言っている。この間、ご承知のように大体できたという発表がありましたように、セレラジェノミクスというITをベンチャー企業が300台のシークエンサーを使って一気にやってしまった。最近、現場に行ってみるとインシリコという感じです。今までインビボとかインビトロとか言っていたが、インシリコは電子回路系のシリコンの中に埋め込んだものです。結局、シグナルをどこで情報処理しているか、わからないんです。途中でチェックはしていますが、その程度で、具体的なデータは全部、コンピューターのシステムのネットワークの中に直接、入れるものですからわからないという状況です。ちょうどフルオートメーションの化学工場みたいな形でコンピューターコンプレックスで動いているわけです。バイオというとITとえらい違うような先入観を持ちがちですが、そんなことはなくてITそのものだと言っていいと思います。セレラジェノミクス社の半分の従業員はIT技術者ですし、ほかにベンチャーキャピタルから1,000億円も集めて使っていると思いますが、その大部分の設備投資はコンピューターシステムです。

ヒトゲノムの大体10分の1ぐらいの塩基対の数、4億3,000万塩基対ぐらいがイネゲノムです。日本はヒトゲノムではアメリカの10分の1ぐらいしか国際貢献していませんで、7%ぐらいと言われている。アメリカは70%。イギリスが20%ぐらいと言っています。他国はイネには興味がないものだから日本がほとんど中心になって研究していますが、世界各国が研究することになっています。ジャポニカ種を研究するのですが、中国だけは日本のジャポニカを研究しないらしい。

おもしろいことが起こっているのは、ヒトゲノムで自動システムとか、試薬から何から全部アメリカ産で、プログラムのソフトウェアもアメリカ製です。今、使っているのは全部、サンという会社のハードウェアと、大学が開発したフリーソフトなんです。それを日本でも使っています。イネゲノムをヒトゲノムで開発されたツールで研究しているわけです。ターゲットが大体10分の1だから、シークエンサーの数も300台に対して30台でいいという感じで現実に進んでいます。世界の主食の40%が米です。米というのはたんぱく質もあるし非常に重要なんです。塩基対の数では主要穀類の中で最低です。ほかはトウモロコシで6倍、大麦で10倍、小麦は40倍です。だから、いいところをねらっていまして、それが突破口になって人以外のゲノムというかITというか研究される。

結局、ITは、考えようによっては、どこが本質的に新しい情報を噴き出しているかが問題で、今、アーティフィシャルに盛んにいろいろアニメをつくったりしていますが、一番はっきりしているのはゲノムの世界で膨大な、本質的に新しい未知の情報が出てくるというのは格別に大きいわけです。スニップ(SNIP)という人のバラエティとかを入れますと、特にファンクションと一緒になってくると、プロテイン(たんぱく質)から、酵素系から複雑なシミュレーションからものすごい情報需要が出てくるだろうというので、バイオを抜きにしたITの将来は考えにくいわけです。その点の動きが去年は過小評価というか、そんな早く進むとは思わなかったというのが正直なところです。しかし、僕も大分前からイネ関係のコンピューターシステムの委員長をやっていまして、かなり知っていたのですが、ヒトゲノムのほうがあんなに早く進むというのは予想外で激動の時代です。

 

iモードのヒット

 

iモードはご承知のように今は1,000万台です。1日4万台増えている。だから、月に百何10万台と増えている。こういう商品はあんまりない。去年の2月22日から始まって、いい文献がありまして、「iモード事件」という松永真理さんが書いている本があるんです。いろいろ読み方があるけれども、要するにああいうプロセスでドコモの中でとにかくできていった。できたものがどういう社会的な影響を及ぼしたかと言うと、1,000万人という人間がこういうライフスタイルを作ってしまったわけです。

 

 

 

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