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終章:実現に向けて

 

本調査研究は、「神戸港を起点とする海上観光航路の開発に関する研究」というテーマのもと、海上観光事業の事業特性を踏まえながら、神戸を訪れる観光客や観光船利用者のニーズを把握しつつ、神戸港を起点とする海上観光航路開発の可能性を検討してきた。その結果、海上観光事業の活性化を促すためには、神戸港の既存観光事業者の企業努力のみならず、港と市街地が比較的近いと云った神戸の特性を活かした旅客ターミナル地区の集客力の向上、また広く内陸の観光拠点等との連携を図るとともに、さらには「みなと・神戸」の魅力向上が必要であることが明らかとなった。

現在の観光船事業を取り巻く課題を整理し、それを克服するための方策として、5つのプロジェクトをとりまとめ「提言」を試みたが、これらの「提言」を実現するためには、今後の社会経済環境の潮流変化も見据えながら、神戸港の観光船事業者が一層魅力ある商品開発や営業努力が不可欠であることは云うまでもないが、上述した観光施策に加えて、観光船の魅力情報の発信や既存のフェリー・旅客船航路の活性化、また関係機関等との連携による大阪湾全体での海上観光の振興を図ることはもとより、関西全体での観光振興に向けた取り組みなど、幅の広い連携体制を確立しながら観光航路の活性化をバックアップしていくことが求められる。

本書で提案した方策はあくまでも例示ということであり、これが全てということではないが、国内において先進的と言われる地位を築いてきた神戸港の海上観光航路活性化のための有効な手段として、中・長期的な視点からの今後の施策の実現化が望まれるところである。

また、阪神・淡路大震災からまる六年が過ぎて港湾施設も復旧した後も、港勢が震災以前の水準に回復しない神戸港の現況の下で、海上観光の活性化を目指した本施策の実現化等を通じて、神戸港が物流を中心とした「港」から「人が集まるみなと」への機能を充実させる有効な対策となり、本報告書をきっかけとした関係者の取り組みが、神戸港発展の、ひいては関西全体の観光振興の一助となることを願って締めくくることとしたい。

 

 

 

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