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2. 経営基盤強化のための行政等の支援の必要性

今回の港湾運送事業法の改正は物流業界における規制緩和の動向を強く反映したものであり、港湾運送事業の構造改革の第一歩であるという評価がある。しかし、大阪港の港湾運送事業者の中には、需給調整の撤廃や労働者保有基準の引き上げという大きな変化に的確に対応できない事業者もあると考えられる。

免許制の廃止による競争原理の導入は、流通業や製造業では当然のこととされているが、長年免許制度のもとで事業を行ってきた港湾運送事業者にはなじみのない環境といえる。競争原理のもとで、自ら責任とリスクを負いつつ事業を存続していくためには、強い経営基盤が前提となる。本報告書では、大阪港に多い中小規模の港湾運送事業者の経営基盤強化方策として協同組合への加入による規模拡大と共同化による効率化を提案し、その達成の手順を示した。

また、元請事業者等における経営基盤強化方策のひとつとしてコンテナターミナルオペレーターへの進出を提案している。港湾運送事業者における経営基盤強化がある程度達成できれば、24時間・365日をはじめとするサービスの向上も期待できる。

しかし、上記の方策によって大阪港の港湾運送事業者が経営基盤の強化を進めるためには克服しなければならない課題が多い。これらの課題のひとつは、事業者自身から生じるものである。すなわち、自ら責任とリスクを負って新しい事業環境へ立ち向かう意欲である。中小事業者が自社だけの力では対応できないほどの大きな変化が予想されるなかで、「共同化はむずかしいからやらない」といった考えで旧態のままの事業を続ける事業者もある。まず、事業者自身が意識を変える必要があるが、それとともに努力しようとする事業者を支える体制が不十分という点が二番目の課題である。

大阪港の事業者の経営基盤を強化したいという意欲を側面から支えるために、行政等における以下のような支援、助成方策の導入が望まれる。

 

1] 制度面の支援

●協同組合の設立や定款変更等の具体的な進め方や制度の活用方法等についての助言

2] 財政面での助成

●協同組合における大型荷役機械等の購入や情報化推進に必要な機器の購入資金の助成

●コンテナターミナルオペレーターへの進出にあたって必要となる資金の助成

●経営基盤強化方策導入事業者や協同組合に対する港湾施設の利用費用や賃借料の減免等を含む助成措置の導入

3] 税制面での優遇措置

●経営基盤強化方策導入事業者や協同組合に対する税制面での優遇措置の導入

 

また、港湾の利用者(船社、荷主)においても、港湾の利用コスト削減やサービスの向上を目指す港湾運送事業者の活動に対する理解並びに情報の提供が望まれる。

 

 

 

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