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まえがき

 

「グローバリゼーションに伴う制度と文化の変容」研究会は、第2年度2000年に(財)世界平和研究所において4回の研究会を行なった。

第1回は、「文化とグローバリゼーション・国際会議」の研究会を代表して出席した青木による報告を中心に行なわれた。2000年6月、ボストン大学経済文化研究所でP. バーガー、S. ハンチントン両教授の主宰の下で、世界10カ国の比較研究のプロジェクトについて、各国の研究者が成果を発表した。ちなみに10カ国とは、アメリカ、ドイツ、インド、中国、南アフリカ、ハンガリー、チリ、台湾、トルコ、そして日本である。そして、各国におけるグローバリゼーションと文化の関係が議論されたが、そのありようは、各国の状態において大幅に異なることが確認された。

第2回は、今年度から故佐藤誠三郎教授の穴を補う形で新しく参加された京都大学の佐伯啓思教授が「グローバリゼーションの概念」について経済的な検討を行なわれた。いまだまとまりのあるはっきりとした概念が、学会にも一般にも存在しない点を強調された。

第3回は、東京大学教授でコンピュータ・ソフトの独創的な開発者(トロンの創造と開発)として知られる坂村健氏が、「グローバリゼーションとITの問題」として、そのアメリカにおける発展の分析とコンピュータの使用が文化の多様性の認識を深めるとの見解を示された。グローバリゼーションの画一化に対してコンピュータの使用は逆に多様性の認識を可能にさせるとの見方は重要な指摘であり、ご自身が開発に携わって成果をあげておられるので説得力がある。

第4回は、国際日本文化研究センターの川勝平太教授が、「太平洋の小島国とグローバリゼーション」について発表された。太平洋に散在する小さな島国は、独自の文化と生活様式を有しながらグローバル化の波の中で漂っている。これは日本にとって重要な問題で、深いつながりが戦前、戦中を通じて出来ており、これらの島国の存在に深く結びつくことによって日本の未来も開けるとの見方である。太平洋の小国の存在は、21世紀の日本と世界にとって大きな意味をもつものと思われる。

以上4回の研究会での活発な議論に加えて、本年度は研究会の最後の締め括りとして(財)世界平和研究所の協力を得て、国際シンポジウムが行われた。トルコ、ドイツ、インド、シンガポールの代表的学者であり知識人を迎えて、(財)世界平和研究所の大河原理事長の議長の下に進められたシンポジウムの全容が、質疑応答の部分も含めて、今回ここに提出する研究報告をなすものである。

各発表者の各々ちがう国と地域を代表しての発表には、まさにグローバリゼーションのもつ多様な問題が明らかにされており、今後の課題も自ずから明らかになっている。この国際シンポジウムと4回の研究会の成果を基礎に、各研究参加者の個人的な研究成果が、今後発表されることを期待して、2年間の研究会の締め括りとしたい。

大河原理事長をはじめ(財)世界平和研究所の関係者の皆様に感謝したい。

 

平成13年2月

政策研究大学院大学

青木保

 

 

 

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