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森分隆

(社会福祉法人「ゼノ」少年牧場 「ゼノ」やまびこ学園副施設長

もりわけたかし 昭和52年岡山大学医学部神経精神医学教室の門をたたき、技術補佐官として大脳生理学の研究をはじめる。以後、てんかんと分裂病の学術的研究と報告を行う。平成元年社会福祉法人「ゼノ」少年牧場総合研究所主任研究員として赴任。平成2年愛護第14回「ほほえみ奨励賞」を受ける。知的障害児・者を対象とした新たな療育として「トレッキング活動」を展開する。音楽集団アジアシンフォニー「KIRAKU」を旗揚げし、初代座長となる。平成8年岡山大学医学部神経精神医学教室非常勤講師、平成10年「備後音楽療法研究会」の講師を務める。「ゼノ」やまびこ学園副施設長に就任、現在に至る。他に、社会福祉法人「ゼノ」少年牧場総合研究所主任研究員、アジアシンフォニー「KIRAKU」代表、岡山大学神経精神医学教室非常勤講師を務める。

 

「ケアを支える精神」―創造的展開の役割―

今回の分科会で特筆すべきキーワードは、「ケアする人の疲弊」に注目している点であろう。

人生とは、人との相互の関わりの中で共感、信頼感、幸福感を得つつ生き生きとした、充実感を持って生きている。とくに、何らかのハンディキャップを持った人にとっては、ケアする人の技術や人間性が大きく左右されるといっても過言ではない。

しかし、ケアする人は、ケアの過程において、対人関係の不信、自信の喪失、抵抗、挫折、など多くの問題に直面し、その人の人間性が暴露されることとなる。ケアする人は、これら人間の尊厳、自我との葛藤など多くの矛盾に苦しみつつも、常に新鮮な感性と豊かな人間性を基本とした創造的活動(アート)を展開していくことで問題を克服し、そこに専門性があるといえる。

そこで、今回は、以下の症例を報告し、ケアのあり方を探っていきたい。

 

 

 

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