5) 治療成績
DOTSの普及により結核患者の治療成績の改善は図5に見るように著しく、1993年以前に較べると、図6に見るように今日の治療成績は格段と改善している。
V. モンゴルの結核の将来とわが国の協力
モンゴルで1994年以後進められた結核対策の改革は誠に見事で、とりわけ菌検査成績の重視、菌検査評価システムの確立、DOTSの普及、治療成績の改善など、結核対策の基本となる重要項目の改善には眼を見張るばかりである。この成果は世界が認めるところであり、これに最も密接にかかわってきたわが国の貢献も誇ってよいだろう。今回、青木正和、森亨の両名は「厚生大臣表彰」を受けたが、モンゴル政府も日本の貢献をよく理解している証拠といえよう。
IUATLDは近くウランバートルで、ロシア、東欧諸国、中央アジア諸国(ロシア語圏)の結核対策担当者を集めて研修会を開く計画という。モンゴルの結核対策の改善が世界で高く評価されている証といえよう。
今回セミナーに参加した際の印象では、新い結核対策、WHOポリシーなどの基本的な問題についてはよく理解されており、実施されているので、日本からこのような形での支援は今回のセミナーを最後としてよいだろう。
ただし、今回訪問してみると、ウランバートルの町には10階建て位のビルが立ち並び、すべての物資が遥かに豊富になっているなど、1995年の第2回セミナーで訪問した時と較べると目覚しく発展していた。貧富の差が大きくなったという意見もあり、ウランバートルから外に出なかったわれわれには分らないことであるが、都市がこのように急速に大きくなり、小さい企業が増えていけば結核の感染機会はむしろ増える可能性もある。モンゴルの結核対策自体はこれだけ改善しているのに、結核患者は減らず、むしろ増加の傾向さえ見られることから分るように、長期間にわたる努力を続けなければ結核は減らないだろう。
今後、モンゴルの結核がどうなっていくか、注意深く見ていき、もし問題があれば再び支援することを考えることも重要だろう。国際協力では「サクセスストーリー」に乗ることも重要だからである。