潮汐の関係や天候によって、1日のうちでも試験海水に含まれる化学物質は質、量ともに大きく変化することが予想された。それは、細胞に対する毒性の強さや質的な違い、例えば違う時間に採取された試料によって毒性を示す溶出画分(溶媒)が異なるなどの結果で明らかになるはずである。そこで、同じ場所から6時間ごとに採水して、24時間での変動を調べた。この試験は舞根において、2000年8月24日から25日にかけて行った(図19〜22)。
その結果、採水する時間で大きな違いが認められた。今回の測定では、24日の13:00の試料では75%を越える障害率(エタノール/エーテルの混液・溶出画分)を示したのに対し、25日1:00、7:00の試料ではほとんど細胞障害は認められなかった。1回だけの測定なので、これ以上の議論はできないが、採水を行う際は、潮汐や天候を十分考慮する必要があると思われる。
2. 試験海水・濃縮画分の培養細胞に対する障害性―2(NRK細胞の増殖阻害試験)
次に、1.の試験と同じ試料を用いて、細胞の増殖阻害試験を行った。各々の結果をグラフに示す(石巻の結果、図23〜30;舞根の結果、図31〜38)。石巻は、10月と11月に採水した試料を用いた。また、舞根は、10月と12月の試料を用いた。この理由は、LDH試験の結果、細胞障害率の差が大きかった区で比較することを考えたからである。
結果は、いずれの試料においても、大きな違いはみられなかった。LDH試験の結果とも相関するところはほとんどなく、例えば障害の最も高かった石巻の11月の試料でも増殖はほとんど抑制されなかった。
今回の結果から、C18カートリッジカラムを用いる方法は、手法としては現場の海水試料の検定にも適用できると考えられた。しかし、結果の信頼性には疑問が残った。平成11年度の評価では、時間はかかるけれども(カラムに海水試料を通す部分だけで1000分、約17時間かかる)、方法は単純で紛れがないため、高い再現性が期待できる、とした。