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事業の実施内容

 

1. 事業の目的 ―本事業の遂行に至った背景を含めて―

 

本事業を実施した目的を明確に示すために、最初に本事業を行う必要性とその背景を述べる。最後に平成11年度の結果を受けて設定した平成12年度の実施目標について触れる。

 

近年、環境ホルモンあるいは内分泌撹乱物質と呼ばれる化学物質に代表される、生物に対して非常に多様でかつ深刻な影響を与える物質による環境への汚染が問題となっている。これらの物質の影響は人類のみならず、その他の陸上動物、そして海洋生物に対する影響が懸念される。これらの物質による汚染は、非常に多様な成分が影響要因となり得ること、微量でも作用し得ること、またその作用も多様であることが特徴である。

内分泌撹乱化学物質は生体に取り込まれた後、動物のホルモンと類似した作用を示して生物の持つ本来の内分泌系を乱すことにより、結果として生殖や行動に異常を生じさせると考えられている。一方、生物に影響を与える物質としては殺細胞性を示す物質、細胞分裂阻害活性、あるいは変異原性を有する物質等も存在し、生物に対する影響は内分泌異常だけに留まらない。それらの作用を示す物質は数が非常に多く種類も多岐に渡るため、その全体像を把握することは困難である。

さらに、これらの化学物質には生物濃縮されるものがある。すなわち、環境中の化学物質の濃度がたとえわずかであっても濃縮された結果、影響をおよぼすレベルに達することは十分に考えられる。そして、このことは化学物質を濃縮した生物自身に大きな影響を与えるだけでなく、それらの生物を餌とする高位の捕食者にも障害をもたらす可能性があり問題は深刻である。

 

 

 

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