海洋データ管理の世界で、最も著名なSydney Levitus博士(米国NODC、WDC-A)が非常に高く評価してくれたが、これはMIRCが行っているような「研究的な」仕事が、いかにデータ管理の社会で少ないかを示している。
3. 水深データ
マルチビーム音響測深機データの品質管理ソフトウェアの開発と新規データベース化
海上保安庁水路部・JODCにおいては、最近日本近海海域において500mメッシュの水深データJ-EGG500を作成した。この水深データは現時点では最も完備した水深データではあるが、最近のマルチビーム音響測深機で得られた精密な水深データはほとんど利用されていない。この実状を踏まえ、水深データの品質管理ソフトウェアに関しては、このマルチビーム音響測深機のデータをチェックし、ファイル化するソフトウェアの開発を行った。対象の性質上、水路部の測深関連の研究者との共同作業を行ったが、完全に自動化することは避け、一部においては専門官の判断を導入できるように工夫されている。このソフトウェアは各種マルチビーム・データの品質管理に対応できるものを目指しており、テストの結果従来水路部内で行われてきた作業を著しく効率化するものとして、高い評価を受けている。
第2年次(1999年次)には、このソフトウェアを利用して、MIRC自体で水路部が観測したマルチビーム測深機データの品質チェック、データベース化を、ソフトウェアのチェックをかねて実行し、結果を水路部に還元した。このソフトウェアは、その後JODCに提供しており、今後東京大学海洋研やJAMSTECが取得したデータにも適用され、水深データの精度向上に資するものと期待している。
水深データの表示技術の開発
水深データ関連のプロダクトとしては、海底地形に関する情報が一般のユーザーにとって直感的にとらえ難い面があることを考慮し、水深データの表示技術の開発研究を実施した。これには静止画作成と、動画作成との2種類がある。前者は、対象海域を任意な位置から任意の俯瞰角度で見た鳥瞰図を作成する静止画を作成するもので、これはすでに製品化にこぎつけている。後者には、さらに2種類あり、1つは日本周辺に20数点の固定点を選び、そこからのパノラマ画像を与えるもので、視点は水平方向に360°回転させることができ、仰角・俯角を変化させることができるようになっている。もう1つは、ウォークスルー方式で、あらかじめ設定したコースを通る潜水・飛行艇から地形(海水を透明にし、陸上地形を含める)を眺めていく動画である。これも、10数種類の場所・コースを設定したものを用意しつつある。この動画は、テストケースのものを見ても非常に印象的であり、これを見たほとんどの人から、海底地形の専門家のみならず、一般の方からも高く評価されている。現在のままでも、製品化することが可能と考えているが、将来はイラスト化した他の情報を加えて、教材になるものを作成して、普及啓蒙活動に用いたいと考えている。