(2) 動画表示設計
普及啓蒙活動において、動画形式で情報を伝えることは非常に有効な手段である。そこで、日本近海の海底地形を視覚的に捉えるための、可視化ソフトウェアの開発を行っている。これには2種類あり、1つは海水が大気のように透明であるとして、あらかじめ設定されたコースを進む潜水・飛行艇から海底地形を鳥瞰していく動画形式(ウォークスルーアニメーション)であり、2000年度末までに日本近海の種々の海域について、地域的に10数コースを設定して、完成させることになっている。ただし、そこに設けるべき説明・ナレーションについては、現在検討中である。このソフトウェアは容量が大きいために、小さなコンピュータでは扱えない上、コースを利用者が任意に変えることができない。そこでもう1つ、より簡易的なソフトウェアも開発した。これは、日本近海に設定された20数地点から地形の鳥瞰図を得るソフトウェアである(幾つかは陸上からの鳥瞰を含む)。この場合には、それぞれの地点から見る方角を360°任意に連続的に変化させることができるし、俯角・仰角も変更することができる。
このソフトを利用して、MIRCとしては将来、アニメや解説画面を加えた啓蒙用・教育用の動画の作成を行いたいと考えている。
2-1-3 水温アトラス・データセット
MIRCでは、1998に水温・塩分データを対象とした品質管理ソフトの開発を完成させている。また、この品質管理ソフトを用いて、すでにJODC/MIRCに収集されたデータベースのチェック・品質管理処理を行うとともに、収集の遅れていた都道府県水産試験研究機関の膨大な観測資料についても、品質管理を行った上データベースに加えてきた。この拡大・整備されたデータベースを用いて、北西太平洋水温(および塩分・密度)アトラスの作成を1999年度末までに完成させた。
すでに、全世界海洋に対して米国海洋データセンター(NODC)が1度メッシュで、World Ocean Atlas 1998を刊行しており、一部では1/4度メッシュのアトラスを用意しつつある。MIRCとしても基本的には1度メッシュであるが、データの多い日本近海については1/4度メッシュのデータセットを完成させた。この成果によるアトラスの作成を、平均値を中心に、行ったが、日本近海・西部北太平洋域において、1度メッシュでもデータ空白部分がかなりあり、より最近の観測データを加えて、アトラスの改良を継続して行っている。
アトラスの出版等については、ユーザの要請に応じて提供する体制を整えたが、実際の出版については、先に述べたADCPデータ等を利用した海流アトラスの作成に合わせて計画しており、互いに補完した実用的なアトラスに結びつけることを考えている。
2-1-4 潮流・海流データの品質管理
潮汐・潮流データの集積には長い歴史があるが、データや計算された調和定数について系統的な品質チェックが行われていない。これらについての統一的な品質管理ソフトを開発し、既存のデータに適用処理して、結果を統一的なフォーマットに整理する作業を2000年度から実施している。