3.2 今後の課題
今年度実施した基本水準標計測のためのGPS測量は、瀬月内海を取り囲む本州、四国、九州の沿岸域を中心に実施し、基本水準面と明確に関係の付いた56地点の楕円体高と験潮所の潮汐調和分解成果を基に、基本水準面高低モデルの構築を検討した。今後は、内海に点在する島部において基本水準標計測のためのGPS測量を実施し基本水準面高低モデルの精度を高める必要があるものと考える。
また、測量船の高さ精度の検証についても、本年度の知見をもとに再度実施し、同時に、実験海域中央で験潮も実施することにより基本水準面高低モデルの精度を向上させる必要もある。今年度の結果からは、各海域についてクロスポイントで測量船の高さの差は、平均において10cm以下であったが、データの経時変化図からは、10cmを越える振幅で上下振動を繰り返していた。これらの誤差をより少なくするためには、測量船によるGPS観測から動揺補正その他の各種補正方法等を再検討する必要がある。
海洋潮汐に関し、今回検討したモデルは現地観測並びに収集したデータによるのものと松本の海洋潮汐モデルとがある。今回の研究では、瀬戸内海という内湾での研究であるが、太平洋沿岸、日本海沿岸など外洋域における基本水準面高低モデルを作成するためには、外洋の潮汐データが必要になる。松本の海洋潮汐モデルは、外洋域に対して展開しての計算ができる。
基本水準面高低モデルを全国展開し、外洋域についても基準面の決定を行うときには、松本の海洋潮汐モデルのような潮汐モデルを詳細に検討、構築し、できるだけ正確な潮汐モデルから、基本水準面を決定する必要があるものと考えられる。