今回用いた電子基準点のアンテナにはTRINBLE製とASHTECH製が用いられている。解析に使用した電子基準点のアンテナは、アンテナの位相特性により高さ成分で最大10cm程度のバイアスの存在が確認されている。特にASHTECH製に、その傾向が顕著にみられるため、ASHTECH製のアンテナを使用している電子基準点に対しては、位相特性情報を取り入れて再解析する必要があるものと考えている。アンテナの機種混在の場合とASHTECH製のアンテナを除いたTRINBLE製のアンテナデータだけを用いた場合の楕円体高の比較を表7に示す。なお、ASHTECH製のアンテナを除いた場合の計算に使用した点は、除いたアンテナ数に従い減少している。
(4) 解析における検討事項
今後電子基準点を用いて測量解析を行う場合の注意点及び解析に対する配慮事項を記す。
A) 測量を行う場合の留意点
測量を行う場合の留意点としては、まず、状況により、2,3セッションに分割して解析することが可能であることから測量時間は、3〜4時問が望ましい。今回実施したような2時間程度の短時間測量の場合は、衛星配置を考慮し、常に最低5衛星が受信できる時間帯の測量計画が必要である。また、アンテナの方位特性が高さ成分で大きく影響してくるため、マルチパスの影響が出ないように測量計画を立てる必要がある。とくに数cmから数10cmの反射によるマルチパスが混入する恐れがある架台、反射物はアンテナから遠ざける。測量点周辺には人工物は置かない。金属製で平面状のものはなるべく避ける。アンテナを固定する三脚はなるべく1m以上高く設置しマルチパスの影響が無いように工夫する必要がある。
B) 解析を行う上で考慮すべきこと
解析を行う上で考慮すべきこととしては、アンテナの方位特性を考慮した解析が必要であることと、基準点の選定上の問題であるが既知点と求点の標高差が500m以上大きい場合の対処法を検討する必要がある。