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今日の本島のハーリーは沖縄観光の端も担っている。したがって行事の実施も旧5月4日と夏祭りの行事としておこなわれているところ、また夏祭りだけでおこなわれているところなどさまざまである。こうした状況のなかで、これまで地区単位で実施されていたハーリーが、地区を越えて、さらに沖縄をこえて本土からも参加するようになって、観光行事としての性格を強め、沖縄の伝統的ハーリーの様相を徐々に変えようとしている。つまり競技スポーツ的な要素が加わり、勝利至上主義的な傾向が強まり、櫂の型が従来の沖縄伝統のものから長崎のペーロン式のものに変わろうとしているのである。櫂の型が変われば当然漕ぎ方も変わっていく。現在、その大会だけでなく、周辺地域にも影響を与え、地区の行事用の櫂も徐々に型を変えようとしている。特に大会を目指すような地域では地区の行事でも大会用の櫂が用いられ、従来の櫂は姿を消す方向にある。

 

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ちなみに伝統的な櫂は水かきの部分が幅7〜8cm、長さ65〜70cmであるが、新しい櫂は幅15cm余、長さ30cmで櫂の先が持ちやすいようにT字型になっているものもある。また地域によっては中間を取り、櫂の幅12cm、長さ40cmくらいのところもある。とにかく現在は競技偏重に傾き、伝統を徐々に排除する方向にある。この問題は沖縄本島にかぎらず石垣でも問題になっている。

競漕舟はサバニという軽捷で農民も漁民も使用する沖縄特有の舟で、本来は到り舟であるが、現在は準構造船である。現在も漁船として使用しているところもあるが、競漕舟は専用船でほとんどの地区で2〜3隻所有している。

乗員は漕ぎ手、大櫂(舵取り)、鐘打ち、旗振りの10〜12人である。

レースは本島では3隻でおこなわれるところが多いが偶然だろうか。また、八重山諸島では豊年祭、節祭ともに2隻でおこなわれるところが多い。

なお、サバニの語源は『民俗大辞典』によれば、「サバ(鮫)を捕る勇壮な舟、すなわち、サバブネの意か、サブネ(狭舟=小舟)か、スィブネ(椎舟)の転訛とも考えられるが定説はない」と記している。

 

 

 

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