その頃のレース中の唯子ことばは「ソーラエンヤー、エンヤサノサッサー、エンヤー、エンヤー、エンヤー」で金や太鼓、ドラを打って調子をとった。しかし今日では以上のような囃子ことばはなく「イチ、ニ、イチ、ニ」である。
レース方法は前日同様、3組が2周。先頭が入れ代わって3回戦おこなう。島の周回は3周以上と規定されているが、現在は2周となっている。選手は中学生が対象であるが、以前のような同地区選手の選出は子どもの数の減少により不可能なため、現在は他地区からの選手も含めて構成されている。したがって以前のような激しい競争はみられない。
かつては祭の3日間は3地区内の嫁ぎ先よりも、親許へ帰って親許の地区を応援したという。
選手は戦前までは伝馬宿に集まり寝泊まりして練習した。(しかし、今は伝馬宿は存在しない)そして真夜中の12時になると先輩格に起こされて潮汲み場へ行き禊ぎをして八幡神社に参詣した。練習の期間は1週間から10日続いたが、戦前までは1ヵ月余も続けられたという。しかし今日ではそれらしきことは何も残っておらず、数日前から練習するだけである。
櫂は左右6本ずつである。服装は戦前までは漕ぎ手は六尺褌、舵取りはきらびやかな衣装をまとい一番目立っていた。今でこそ赤・青・黄のカラフルな着物を着るが、以前は揃いの衣装で背中には鷲や波に朝日、富士山といったあざやかな絵が描かれた。そして衣装はレースの直前まで選手たちも見ることはできなかった。衣装は見る人にとっても着る人にとっても楽しみであった。
レースが終了すると、船団は川を下り祭りは終わる。
16] 勝浦八幡神社祭 (現在、競漕はやめている)
・和歌山県東牟婁郡那智勝浦町
・9月15日 勝浦漁港
・八幡神社 TEL0735-52-1646
・櫂伝馬 5隻あり
★現在、競漕はおこなっていない。八幡神杜の例大祭の行事。
17] 水門神社祭礼
・和歌山県西牟婁郡串本町大島
・2月11日 大島港〜串本沖
・大島地区と祭典保存会 TEL0735-62-3171(串本町観光協会)
・和船(木造)全長9.8m 幅1.75m 深さ0.6m 櫂と大櫂(艫櫂) 漕ぎ手12人 大櫂1人 ほか3人乗り 計16人
★串本大島の大祭である水門神杜の祭礼のメインイベントの一つ。祭式のあと、ご神体を移した神輿を船(トウブネという)に乗せ沖の通夜島(現在は苗我島)へ見送った後、2隻の櫂伝馬(オオトリとハヤブサ)が串本港沖のブイを廻って帰る3.8キロの長距離レースを行う。漕ぎ手は12人と多い。