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あとがき

 

これまでの三ヵ年にわたり、船舶通航業務(VTS)で使用されるシステムを高速船に対応できるように検討してきた。

高速船の最高速度の設定はシステム全体の基本設計に大きく影響を与える要素であり、世界における高速船やVTSの現状を調べ、最高速度は50ノットと設定した。その上でシステムの構築においては経済的効果が大きく、既存のシステムとの円滑な移行が可能な方式について調査研究を行った。その結果、既存の船舶通航業務用システムで使用しているレーダー送受信アンテナの前面と後面の両方からレーダー電波を輻射する両面アンテナの形式としてデータの更新周期を早める事を具体的に提案した。更新周期を早める事によるシステム上の問題点や効果などについて詳細な検討がなされ、実態調査やシミュレーションにより両面アンテナ形式の有効性を確認した。

三ヵ年にわたる詳細な検討の結果、信頼性の確立されている従来からの技術の延長上にある新レーダー方式で、高速船に対応できるばかりでなく一般の船舶の追尾においても高性能なシステムを構築できる事を示した。今年度は特に、現状実態の調査を2回、また管制官へのアンケート調査もおこなって、追尾性能の向上の可能性について検討した。新方式レーダーによるターゲットの位置情報の更新周期は従来の半分の3秒となる事から、追尾ゲートを狭くする事が可能で追尾結果が安定し、「乗り移り」や「ロスト」の減少が期待できる事がわかった。しかし、「船舶の陰となるもの」や「レーダー偽像によるもの」などは新方式レーダーでは解決できない現象が今後の問題として指摘された。これらの対策は将来の課題である。

今後はこの新レーダーシステムの具体的な構築と将来課題の解決策の検討が進められる事を期待するものである。

最後に、本調査研究にあたっては、三年間にわたって度重なる作業部会で検討を重ねてくださった部会委員の御努力の賜物であり、また、委員会においては貴重な御意見を賜った委員各位ならびに関係官庁の関係官各位に衷心より御礼を申し上げる次第である。

 

平成13年3月

 

船舶通航業務における高速船の監視方式調査研究委員会

委員長 林尚吾

 

 

 

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