<寄稿>
JICAベースによる運輸・交通セクターへの協力
貝原孝雄*
1. はじめに
国際協力事業団(JICA)は、来る2000年8月1日で27周年目を迎えることになり、およそ四半世紀に渡り、一貫として技術協力の実施機関としてその任務を果たしてきた。
JICAでは2000年の1月1日から、大幅な機構改正が行われ、4つの地域部が設立され、より一層、国別・地域別アプローチが強化されることになる。地域部の主な業務に「国別事業実施計画」の作成があり、その一環として新規案件の統一要望調査を実施している。従来は事業別(スキーム別)で、時期的にもバラバラに実施していた要望調査を統一して行うものであり、オールJICAの視点でスキームの調整が図られることから、効果的な計画づくりや国際機関や他のドナーとの調整も図られ、重複のない最適な事業の展開が可能となる。
JICA事業の効率と効果の一層の向上、とりわけ上述の「国別事業実施計画」の実効性の向上を図るためには、主要な開発セクターに関して、JICAが蓄積してきた経験及び知見を体系的に整理し、JICAの基本方針を明確化した「課題別指針」が重要となる。JICAでは、事業の効果的・効率的推進のため、「国別事業実施計画」と「課題別指針」の二つの柱を基に、JICA事業を展開することとしている。「国別事業実施計画」については2000年6月現在49カ国について作成済みであり、課題別指針についても、各課題別に主管課が決められ、現在作成中である。運輸・交通分野については、社会開発調査一課が担当となっている。
今回はJICAの協力実績に関して、本紙の読者の方々が特に関心を持たれている、運輸・交通セクターについて概観してみたい。
2. JICAの事業概要について
JICAは1974年8月1日に発足し、1999年度現在、本部に20部、3室、2事務局、19の国内機関及び56の在外事務所から構成されている。定員は1999年度1,218人(本部666人、国内機関213人、在外事務所339人)である(JICA設立当時は994人)。
事業実績の概要は、以下のとおりである。
出所:1998年国際協力事業団年報
3. 技術協力及び無償資金協力
1) セクター別支援実績
(1) JICAの協力実績に関して、経費ベースでみると運輸・交通セクターの全セクターに占める割合は、年度によって若干のばらつきはあるが、過去3年間での平均では7%強であり、毎年約110億円を支出している。但し、形態によって全体に占める割合は異なり、調査団派遣については人数ベースで12.7%(過去3年の平均で年間1,156人の実績)と最も比率の高いセクターの一つとなっており、開発調査事業における運輸セクターの重要度を示している。また、研修員受入は678人(4.5%)、専門家派遣は331人(6.5%)となっており、協力隊派遣については全体の0.2%(6人)と極僅かとなっている。
(2) 研修員受入、専門家派遣に関しては、計画行政、社会福祉の分野が伸びて全体のパイが年々大きくなる中で、運輸・交通セクターのウエイトは相対的に小さくなる傾向にある。
* 国際協力事業団社会開発調査第一課長