2.7 機開部船舶管理システム(予備品、メンテナンス計面)
造船学会誌平成12年11月号にIHIマリンの鈴木康雄氏が船舶管理システムを発展させた「ビルマスター」を紹介されている。同様なシステム“ADMAX SM”はLNG船等で採用されているが、通常の商船にも是非採用し普及すれば船舶管理のあり方もよく把握できるのはないか。
2.8 IT革命関連の電子商取引
米国ではネットバブルがはじけ、インターネットは革命と呼ぶ代物ではないとの指摘もある。日本ではオフィスワークの標準が進んでいなかったため、定型労働を中心に労働生産性の上昇につながる、電子商取引(B to B)を中心に普及する可能性が高い。
造舶Web会社も2001年4月に設立され舶用工加盟会社の参加を得て、舶用資材取引、舶用機器の設計・技術情報交換に今後活用される。発注者である造船所のシステムがWeb対応になることが先決で、全社的なツールとして使いこなす社内教育が不可欠である。導入のための準備が不十分であれば造船所のみならず効果は減殺され舶用工業の間接部門の労働生産性の向上につながらない。
2.9 舶用資材海外調達
低船価受注、円高にもかかわらず主要資材は国内調達が原則で、海外調達は納期等危険と隣あわせの資材手当てと認識され、調達率は平均すると1桁の水準で推移しているという。現状は納入価格を巡る攻防に終始している。
2.10 航空会社の運航、整備体制
JETエンジン化以来、航空機設計では機体設計とエンジン設計は両輪を成す技術である。
機種は限定採用され、整備は従来、自社整備工場で運航整備、定例整備を行い、メンテナンスのノウハウを蓄積する強みがある。ボーイングやエアバス開発の新機種採用時には、設計段階で部分的にデザイン・インして、各航空会社のオプション仕様として反映されている。航空機は離着陸時などでは、船舶以上に過酷な環境で運航されているが、寿命ははるかに長い。商船のライフサイクルコスト最適化が取り上げられる時期が今後あると思う。
経済性に圧倒的な影響を及ぼす船体構造の保守管理基準レベルが上り、良好に維持されるように新造船時の仕様に反映されれば、長寿命化が命題となるであろう。他業界の取り組みもよく研究することが必要である。
おわりに
信頼性を重視する船主や船舶管理会社の要求レベルから見れば、舶用DE機関技術は未だ成熟域には達していない。2.3でふれたようにコモンレール方式も将来標準設計となる時代が早晩やってくる。欧州の乗用車市場では温暖化ガス問題(燃費、軽油の価格安)が重視され、欧州メーカーのディーゼル機関は乗用車のシェアが20数%台にあり漸増傾向にある。日本のメーカーもいすゞのポーランドでのDE機関生産工場建設やトヨタなどもディーゼル車の投入によりシェアUPを急いでいる。2000年秋以降ハイブリッド車が米国市場に投入され、燃料電池車が将来一般化するまで中継ぎ役で、重要性が増す。
安全工学の見地からヒューマンファクター、制御、計装システム、燃料問題も含めて舶用DEをシステムとして見直しをすることも今後必要であろう。ディーゼル機関技術は化石燃料の供給がある限り益々重要性を増す。機関メーカー関係者に企業が存続できるようにコスト低減を図り妥当な価格で良品を供給していただくよう要望したい。
最後に、本稿とともに前掲の造船学会誌を参照していただきたい。参考文献は省かしていただく。