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機能の開発が一段落すると、次に性能の向上が図られる。機能の開発によって新しいことが出来るようになったのはありがたいことだが、あまりにもその処理に時間がかかるのでは仕事にならない。そこで性能を向上させ、応答性を良くすることに力が注がれる。先のワープロの場合も、たとえば従来のキャラクター表示装置からビットマップ表示装置に切り替わった時期には、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)が利用できるようになるという機能的向上があったのだが、その当時は、たとえば半画面分の上下のスクロールに数秒もかかるような状態であった。こうした性能上の問題を、メモリの増設や高性能のCPUの利用によって解決するのがこの段階である。

一般に、この段階まではユーザビリティはあまり問題にされない。言い換えれば、機能や性能があってこそのユーザビリティであり、ユーザビリティの水準を高めることは、それらの機器やシステムの機能や性能を十分に活用できるようにすることである、ともいえる。しかし、製造業の実態を調べてゆくと、機能の開発と性能の向上が図られた段階で、きちんとユーザビリティの向上にすすんでゆくケースはむしろ少ないといえる。実際には、性能向上が図られると、次には低価格化が課題となり、それが達成され、市場に製品が行き渡ってしまうと、成熟商品というラベルが貼られ、もうその製品に関する開発上の問題はすべて解決してしまったかのような誤解が生じているのである。

 

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図1 押すのか引くのか分らないドアノブ(実際には押して開けるのだが、ドアノブの形は引く動作を誘導している)

 

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図2 規格の統一されていないリモコン(個別に操作を学習しなければ使えない)

 

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図3 複雑で分かりにくい配線(パソコンの電源関係と信号関係のケーブルが不規則にからまっていて、メンテナンスが大変)

 

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図4 駅の券売機(コンピュータを応用した公共製品であり、誰でもがつかえるべきなのだが、実際には操作に困惑しているユーザをしばしば見かける)

 

 

 

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