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(b) その他のルート

その他のルートについても、時間価値が尊重される区間で本船等のROROタイプの超高速船の有利性が認められ、在来船と補間しつつ競合し合うことにより、輸送ニーズの多様化に効率よくダイナミックに対処できる体制を整えることがきるであろう。

また、遠距離航路用としては、第2車両甲板室に、ヘッドレストレーラーを搭載することも充分可能であるから、例えば、大阪・北海道間は2隻でデイリーサービスが可能となり、巨大産業経済ブロックである京阪神地区と北海道を直結する利点は極めて大きく、新航路の開設が期待される。

 

8. 「海陸一体の国内交通システム」の実現による効果

特に、幹線物流におけるモノの流れがスムーズになり、また、輸送に伴う時間的な制約が取り除かれるため、物流の効率化を図る上でIT革命との顕著な相乗効果を期待することができ、巨大な物流・流通市場を大いに活性化させ、日本経済に活気を取り戻すことができる。そして、物流・流通市場の効率的な活性化により、産業立地競争力の回復と強化が促進されると共に、庶民の購買力を実質的に向上させる基本的な要因が形成されるため、庶民の購買意欲の向上を期待することができる。

以上により、継続的な「内需の拡大」と「国内産業の拡充」を効率よく図ってゆくことができる無駄のない活力に満ちた「バブルレス産業経済体制」への移行が強力に推進され、日本経済を新たな発展軌道に乗せることができる。併せて、交通安全の確保や地域の活性化、環境保全、防災対策等にも大きく貢献することができる。

 

9. おわりに

経済成長が滞り企業倒産や失業者が増加し、少子高齢化や産業の空洞化、環境問題等のマイナス要因に加えて莫大な政策上のつけを背負い、先行き不安が一層深刻化する中で、何よりも求められるのは、経済を新たな発展軌道に乗せることのできるダイナミズム(力強さ)と永続性を兼ね備えた(他国の追随を許さぬ程の)オリジナリティのある技術戦略的な対策であろう。

このような時代の要請に応えるために、本稿でいう新しい交通システムの早期実現に向けて、拙提案の「新型高速双胴水中翼船(HTH)」が、本格的な開発課題として採択されることを期待してやまない。

尚、本稿は(株船舶技術協会社長濱村建治氏の御承諾を得て、「船の科学」本年10月号に掲載の「海陸一体の交通システム」からその大部分を抜枠して転載させていただいたものである。又、文末になり恐縮ですが、本稿の作成に際して、御多忙中をも厭わず熱意あふれる御指導と力強い御鞭撻を賜りました横浜国立大学工学部の池畑光尚先生に厚く御礼を申し上げます。

 

参考文献

1) 塩田浩平:「海陸一体の交通システム」、船の科学、平成12年10月号

2) 宮田秀明他:「新型双胴水中翼船の開発」、日本造船学会論文集 第168号

3) 宮田秀明他:「新型双胴水中翼船の開発」、日本造船学会論文集 第164号、第166号

4) 赤木新介:「新交通機関論」、コロナ社

5) 赤木新介:「旅客用高速船の経済性評価と需要予測」、関西造船協会誌 第220号

 

 

 

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