2.3 放射性物質の海上輸送の安全に関する調査研究(RR 46)
我が国の総発電設備容量に占める原子力発電の割合は、35%を超えるまでになっており、それに伴い各種の核燃料物質が海上輸送されている。特に照射済燃料、高レベル放射性廃棄物やMOX燃料を含むプルトニウムなどは、国際原子力機関(IAEA)の安全輸送規則においてB型核分裂性輸送物に分類され、定められた技術基準を満足する輸送容器に収納された後、IMOのINFコードや運輸省海上技術安全局長通達の海査第520号に定められた構造・設備要件を満足する専用運搬船(照射済核燃料等運搬船、INF3船)の船倉内に積載され、輸送されている。これらのB型核分裂性輸送物の技術基準として「輸送物は少なくとも800℃、30分間の火災環境に耐えられること」という耐火要件が課されている。しかし、この要件は、陸上輸送中に遭遇する火災を想定して策定されものであり、海上火災については火災の持続時間等に疑問を呈する意見が一部海外から出された。
一方、照射済核燃料等運搬船については、海査第520号の中で、使用済核燃料、プルトニウム(燃料を含む)または高レベル放射性廃棄物を運搬する船舶の構造および設備について、船舶安全法に定める基準によるほか、「照射済核燃料等運搬船構造・及び設備等に関する特別基準」によることと定められた。その後、平成11年にINFコードを強制化するべくSOLAS条約が改正され、平成13年1月から強制化されることとなった。INFコードを国内法に円滑に取り入れるにあたって、照射済核燃料等運搬船の「耐衝突構造」について基準の見直しをすることとなった。
本調査研究は、以上の背景のもとに、照射済核燃料等輸送物の海上火災時の安全性の評価及び照射済核燃料等運搬船「耐衝突構造」要件について検討を行うこととなった。
海上火災時の安全性に関しては、過去に発生した海上火災の事故例と国内外の研究機関等で実施された海上海上火災関連実験データの収集、海上火災の事故例データに基づく海上火災時の苛酷事故のシナリオ設定、海上火災時の貨物倉内雰囲気温度と輸送物の健全性評価、海上火災発生時の輸送物の確率論的安全性評価について検討した結果、海上輸送の安全性は十分に高いとされた。
耐衝突構造については、国内外における耐衝突防護構造の基準や指針の現況を調査するとともに、現在就航している船舶の状況および耐衝突事故事例の調査、耐衝突防護構造についてミノルスキー法に準拠している現行基準の検討課題の洗い出しを行ったうえで、最近の船舶運航状況を考慮して照射済核燃料等運搬船を被衝突船とみなした想定衝突事故シナリオを作成して最新の解析ツールを適用した損傷解析を実施した。即ち、想定衝突船として、偏平型船首形状と尖鋭型船首形状の2隻のVLCCを選定し、簡易解析法を適用することを想定した新評価法により解析を行った結果、
1] 偏平型船首の場合には、衝突船の船首貫入量は外板から2,150mm(縦通隔壁までの距離の0.64倍)
2] 尖鋭型船首の場合には、衝突船の船首貫入量は外板から2,750mm(縦通隔壁までの距離の0.82倍)
という結論が得られた。
2.4 高速船特殊基準及びHSCコードの見直しに関する調査査研究(RR 47)
我が国では双胴船に対する正式な設計基準ががないために、これまで、船体構造設計は、運輸省中国運輸局から提案されている指針案及びモノハルに対する構造基準(軽構造船暫定基準、高速船構造基準)が準用されてきた。
このような状況の中で、双胴船の需要の増大あるいは輸入艇の増大に対応するために、我が国の独自の安全基準の作成が緊急の課題となり、平成10年度から2ケ年に亘って以下の調査研究を行った。
a) 双胴間の干渉を考慮した双胴応答計算プログラムの整備