今後、本部会では、FRの動きへの対処とともに、これらの基準等の整備に向けて調査研究を実施することが必要であると考られる。
1.3 設計設傭に関する調査研完(RR74)
1.3.1 老朽舶の安全対策に関する検討
平成9年1月に日本海で発生したロシア船籍タンカー「ナホトカ号」の船体折損事故は、流出した多量の重油により我が国沿岸を汚染するとともに、漂着した重油は甚大な被害を引き起した。本件については、運輸省に事故原因調査委員会が設置され、事故原因の究明にあたり、「事故原因は船体の著しい衰耗による船体縦強度の低下である。」との調査結果を発表した。
この事故調査結果を踏まえ、このような老朽船による海難事故の抜本的な再発防止の観点から、IMOMSC68(1997年5月)をはじめとする種々の関係小委員会等に提案を行ってきた。その結果、油タンカーの船体構造部材の板厚衰耗限度の記載の義務化については、1997年11月のSOLAS条約締約国会議で採択され、1999年7月1日から実施されている。
本調査研究は、老朽タンカーの安全に資するIMOへの我が国提案を作成するため、船体構造の縦強度即ち経隼劣化(老朽化)に関する詳細検討を実施することにより、国際的に統一された縦強度評価の判定基準を作成することを目的としている。平成11年度は、タンカーの構造部材の経年劣化による断面係数の減少と腐食の相関データから船体縦強度の許容限度に相当する板厚の調査、船体縦強度に影響する断面係数の調査及び構造破壊解析を詳細FEM解析及び簡易計算法により種々の船型・大きさについて数隻分実施し、タンカーの衰耗時の許容船体縦強度の検討を行った。これらの成果は、DE43、DE43/13及びDE43/INF.3としてまとめられた。これらの日本提案は、DE43で審議され、多くの賛同を得た。今後さらに、縦強度の衰耗限度を超える船舶の修理方法などについて、検討を行い、本調査研究の目的をより効果あるものにするため、DE43の結果を踏まえて、引き続き老朽船の安全対策を推進ための検討を行う方針である。
1.3.2 操縦性暫定基準の見直し及び操縦性 データベースシステムの活用
1993年IMOで操縦性暫定基準A751(18)が採択されたが、この基準の適用性、妥当性そして問題点について、鋭意検討を重ねてきている。本年度も、我が国で建造された船舶の海上試運転結果等の多数のデータを集収し、さらに暫定基準との比較検討を行った結果、幾つかの問題点が浮かび上ってきた。
平成11年6月に開催のMSC(海上安全委員会)で、我が国の見直し請求案が承認され、DE(設計設備小委員会)で見直しのための審議が再開されることとなった。これに伴い、RR74操縦性WGとしては、平成11年度の作業として次の項目を中心に調査研究を行った。同時に外国のこの問題に対する情報の収集に努めた。
1] 実船の計測精度の高い海上試験データの収集を行い、基準値そのものの検討を行うこと
2] 実際に操縦性の基準値が適用される場合のことを念頭に、操縦性能の推定精度を向上させる方法に関する検討
3] 実際の海上試験の計測等に関連して、風・波等の外乱と操縦特性の相関や、外乱の修正等に関連した検討
今後、さらに、より合理的な操縦性基準値の制定と操縦性能推定の実用的な開発に向けて検討がなされようとしている。
1.3.3 バルクキャリアの安全対策に関する検討
本調査研究は、バルクキャリアの安全性に関する調査を、船舶に係わる総合的安全性評価の手法であるFSA(Formal Safety Assessment)を用いて実施し、バルクキャリアの安全性向上を図るとともに、FSAによる検討システムの構築及びIMOにおけるバルクキャリアの安全性向上のための審議に資することを目的として、平成11年度は、IMOのFSAガイドラインに示されるStep 1から5の作業の準備(Step 0)として、研究対象とする
1] 船舶の一般モデル