日本財団 図書館


このような場合には、解析上の工夫が必要となる。そのような例として、以下では、海水ポンプ等にみられる大規模問題を効率的に解析するための方法を考える。

 

3.1 解析法

図3に示すような海水ポンプを考えると、その内部の領域だけでなく、外部の海水の影響を考慮する必要がある。これらを全て同時に考慮して解析しようとすると未知数の数が膨大となる。そこで、解析すべき領域を、図4のように、腐食・防食状態を主に検討する注目領域Ω1とそれ以外の付随領域Ω2に分割する。

付随領域Ω2について、離散化方程式は以下のように書くことができる。

κ2[Hr2+rI]{φ}=[Gr2+rI]{i} (8)

ここで、ΓIは、領域Ω1とΩ2の境界面である。境界Γ2上の境界条件を上式に代入し、非線形な境界条件については線形化処理を施すと、次式のような方程式が得られる。

I}=[AΓI]{iI}+{b} (9)

ここで、Aおよびbはそれぞれ定数マトリックスおよび定数ベクトルである。上式は、ΓI上の境界節点値のφIとiiを関係付ける方程式となっている。この関係式を、注目領域を離散して得られる連立方程式の境界ΓIにおける境界条件として与えれば、付随領域の影響を考慮に入れた解析を行うことができる。

機器の設計においては、適切な条件を求めるために形状や材質を種々に変化させた解析を繰返し行う必要がある。この方法では、注目領域だけの再計算ですませることができ、注目領域の設計変更の度に大きな計算をやり直す必要がないという利点がある。

 

3.2 解析例

適用例として図3に示した立軸海水ポンプに対する解析について不す。5)解析部分の全長は6400[mm]で、主要構成部材はFC200である。解析対象を、まず、ポンプの外部と内部に分割し、さらに、ポンプの内部について、複雑な構造をしたガイドケーシング部分と単純な形状をしたコラムパイプ部分とに分割している。そして、ガイドケーシング部分を注目領域とし、その他のポンプ外部およびコラムパイプ部分を付随領域として取扱っている。このような、分割法により図5に示すようなポンプ内部側面およびポンプ外部側面における電位分布が得られている。これにより取り付けられた亜鉛によるカソード防食の効果について検討を行うことができる。

 

012-1.gif

図3 海水ポンプ

 

012-2.gif

図4 海洋構造物の大規模問題(注目領域および付随領域の分割)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION