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はじめに

 

オーストラリアの造船業は、過去の国内市場向けの鋼製船舶を中心としたものから、国際市場向けの軽量高速船を中心としたものに、10数年で大きく変化し、軽量高速船の市場では国際的な地位を築くまでに発展してきた。この背景には、1980年代に政府の造船業界に対する補助金、および、輸出金融保険公団(EFIC)による融資・保証制度がある。造船業界への補助金は、現在3%と低率になっているが、EFICの融資は、オーストラリア製船舶を購入する海外のバイヤーに対する融資が与えられるもので、海外バイヤーの資金調達を容易にすることで、オーストラリア製船舶の輸出促進に貢献している。新船の購入には多額の投資を必要とするので、こうしたオーストラリア政府の融資制度は、輸入国バイヤーにとっては、オーストラリア製船舶を購入する大きなインセンティブになっている。

政府は、補助金の継続・撤廃を含めた造船業政策を策定するため、造船業諮問委員会を1996年1月に設置し、政策提案レポートが同年6月に提出された。本稿は主に、その造船業諮問委員会の報告レポート、およびオーストラリア政府のホームページ等の情報を踏まえ作成している。オーストラリア政府は、Shipbuilding Industry Review Panelに先立ち、造船業界の現状調査“Survey of Shipbuidling Activity for 1996-1997”をまとめたが、これはその後更新されていないため、造船に関するデータは、Shipbuilding Industry Review Panelに掲載されたものをそのまま使用しているものもある。ただし、高速船については、英国の業界誌“Ferry International”から最新版をとりよせ、データを更新した。

なお、オーストラリアの会計年度は、7月から翌年6月となっており、文中、1998/99年などとある場合は、会計年度を指す。さらに、GDP成長率や輸出入などのマクロ経済指標以外は、1999/2000年のデータが未発表の場合が多く、本稿では、1998/1999年のデータを使用している。

 

 

 

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