日本財団 図書館


はじめに

 

東南アジア諸国では一般に、日本のような産業・業界ごとの詳細な統計は発表されていない。とくに、インドネシアでは、長期スハルト政権がアジア通貨危機に端を発した経済の混乱の中で倒れた後、今日でも政治、経済の不安定な状況が続いており、政府当局から業界の詳細データを入手することは非常に困難である。海運・造船産業においても同国政府ではデータの収集・整理には力をいれていないもようである。そのため、関連省庁に問い合わせても、昨今のインドネシア情勢を考慮すると、データを得られるとは考えにくく、また、インドネシア造船・海洋工業会(IPERINDO)などの業界団体でもこれまで全国レベルの調査や統計のとりまとめは行っていないもようである。

一方、シンガポールに隣接し、「成長の三角地帯」の一角として1990年代に急速に工業化がすすんだバタム島等では、外資系(主にシンガポール系)の造船各杜の進出もあり、造船業の発達がめざましい。従来、インドネシアでは、インドネシア民族資本の企業で、ジャワ島、スマトラ島に多いIPERINDOの会員企業が、ジャカルタ港など商業港に入港する船舶の修繕等を行い、マラッカ海峡を航行してシンガポールで修理を行うようなオイルタンカーなどの大型船舶をバタム島等の造船所が受け持つという棲み分けができていた。しかし、最近、バタム島等の造船所が、これまでIPERINDO会員各社が扱ってきた中型船舶修繕事業にも参入しはじめているもようである。IPERINDOでは、両者間の棲み分けの模索・検討が必要とし、その第一段階として、バタム島造船所群に対する評価・検討を実施した。その調査報告書を入手することができたため、その翻訳を添付する。バタム島造船書群に対する業界調査をインドネシアで実施するのは、今回が初めてのことで、貴重な資料であるといえる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION