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3-3 EPAのガソリンエンジン排ガス規則

 

前節で述べた1994年11月9日の船舶の内燃機関からの排ガス規則のNPRMのうち、ディーゼルエンジンに関するものは当面立法化から外されたが、CAAに基づきEPAが調査した非道路用エンジンの大気汚染への影響調査では、非道路用エンジンから排出されるNOx、VOCが地表オゾンを増し、排出されるCOと共に健康に少なからぬ悪影響を及ぼすことが判明した。

また、VOCの中で最も多いのはHCであり、HCの排出規制が検討対象となった。

2-2節で述べたごとく、EPAの調査結果では全汚染源から排出されるHCのうち非道路用エンジンを発生源とするものは10%であり、さらに、この10%のうち30%はレクリエーション用ボートエンジンから排出されるものであることが判明し、レクリエーション用ボートに対し何等かの規制を加えることが結論付けられた。

 

EPAはさらに、レクリエーション用ボートから排出されるHCを分析の結果、OB/PWCに使用されている2ストロークSIエンジンから排出されるHCが大部分で、4ストロークガソリンエンジンを使用している船内外機や船内機は2ストロークエンジンに比して85%クリーンであることが判明し、産業界に無用の混乱を持ち込まないために当面OB/PWCの2ストロークエンジンのみを規制することとした。また、NPRMに対する一般からのコメントを分析の結果、NPRMに記された排出規制値(HC 75%減、NOxの2006モデル年のレベル6.0g/kW・hr)が合理的で産業界にも受け入れられる値であることを確認し、他の補足事項を加え1996年2月7日SNPRMを出し、最終的に一般からのコメントを求めた。

その結果、最終規則が確定し1996年10月4日、Control of Air Pollution For New Gasoline Spark-Ignition Marine Engines (Final Rule 61FR52102 Oct. 4, 1996)が公布された。

 

CAAは、前節で述べたごとく排ガス規制公布に際し“新技術を導入してコスト効果を配慮し最大の排出量減少を得べし”と規定し、コスト効果の少ない規則の制定を戒めている。舶用ガソリンSIエンジンの排ガス規則作成に当たり、EPAが解析した主な点は、コスト効果、価格弾力性、工場投資の分散、排出基準と技術オプションの関係等である。

コスト効果という点では、舶用ガソリンエンジンの規制対象を2ストロークSIエンジンに絞り、更にHCの減少量を75%に抑えたこと、HCのみを規制せず、HC+NOxを規制することとしたこと等、産業界に配慮した法規となっている。HC+NOxを規制したことによりNOxは若干増加するものの、HCをコスト効果高く減少できる排出基準となっている。

 

 

 

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